2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヘーゲル・ラートブルフ法哲学における事物の本性概念の分析と現代自然法モデルの構築
Project/Area Number |
02J09793
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
金澤 秀嗣 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヘーゲル(Hegel) / ラートブルフ(Rad bruch) / 事物の本性(Natur der Sache) / 自然法(Naturrecht) / 新ヘーゲル主義 / ラーレンツ(Larenz) / ナチス(Natioralsolialisoius) / 国際情報交換(ドイツ) |
Research Abstract |
今年度は、ヘーゲル並びにラートブルフ法哲学における「事物の本性」概念の意義を解明することに研究の主眼を置いた。科学研究費補助金は、情報機器(ディスクトップ及びノートパソコン・印刷機)や文献(ヘーゲル哲学・ラートブルフ法哲学・哲学倫理学一般・辞書類その他)の購入、また在外研究に従事するための渡航費に充当された。 1:ヘーゲル法哲学における事物の本性概念については、「ヘーゲル法哲学におけるNatur der Sacheの意味」という論文を執筆中である。同論文では、イエナ期『自然法論文』・『体系構想』からベルリン期『法の哲学』に至る法理解の変遷を詳細に検討している。ここまでに得られた成果として,(1)ヘーゲルの〓座が自然法(Naturrecht)から事物の本性(Natur der Sache)を経て「法」律(Rechtsgesetz)へと移行している点、(2)法が成立する基盤として共同体構成員による相互承認(gegenseitige Anerkennceng)が前提とされている点が明らかになった。 2:ラートブルフ法哲学については、戦前期におけるその法実証主義的・相対主義的傾向と戦後期の「自然法論への傾斜」とを結ぶ結節点として、彼が法の素材としての事物の本性に着目している点を取り上げた。その結果、ラートブルフが唱える「法律を超える法」は実定性を有している点で従来の自然法とは似て非なるものであり、従って「ラートブルフは自然法論に転向した」という見解は誤りである、との知見に至った。 上記の研究を遂行するため、本年度2回(2002年5月14日〜7月30日、11月16日〜2003年3月20日)にドイツ・アウクスブルク大学に赴いた。滞独中は研究文献を収集するとともに、同大学アルノ・バルッツイ教授と上述のテーマにつき意見を交換することができた。 本年度に得られた知見については、来年度以降に学術論文・学会発表として公表する予定であり、現在のところ論文3本程度を来年度中に発表すべく執筆中である。
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