2002 Fiscal Year Annual Research Report
冷戦後の秩序再編成と地域的国際機関の役割―欧州連合(EU)の拡大を事例として―
Project/Area Number |
02J09860
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
東野 篤子 慶應義塾大学, 法学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 国際関係論 / ヨーロッパ / 欧州連合(EU) / 安全保障 |
Research Abstract |
本研究は、欧州連合(EU)の東方拡大を事例として、冷戦後ヨーロッパの秩序形成について考案を行うものである。初年度(平成14年度)は、指導教官のチュートリアルの下、研究計画に従い、二次文献をもとに先行研究の整理、理論枠組みの形成、時系列的な事実関係の整理を行った。とりわけ、本研究の中心的テーマである「EU拡大と(経済や政治的安定を含めた広義の概念としての)安全保障」との連関について、理論枠組みを完成することが出来た(なお、EU拡大についての理論的考察は、既存研究では全く手が付けられていなかった)。 この理論は、EU内部の主要アクター(とりわけ、英・仏・独の三カ国およびEUの内閣にあたる欧州委員会)の政策決定者らが、EU拡大に関する様々な決定を行う際、安全保障考慮(脅威認識)はどの程度影響を与えたのか、あるいは、EU拡大の諸決定は、どこまで安全保障上の理由によって正当化されてきたのか、という問を考察するのに有意義な枠組みを提供するものである。冷戦後のEU拡大プロセスでは、実際の加盟交渉が極めて技術的・経済的な関心に基づいて行われたのに対し、EUを拡大するそもそもの理由付けや、交渉の結果の正当化は、常に安全保障のロジック(「全ヨーロッパの安定と平和の確保のためのEU拡大」)を用いてなされてきたという特殊なメカニズムが存在する。本研究ではこのメカニズムを、安全保障研究において欧米で近年著しく注目を集めているコペンハーゲン学派の「安全保障化(Securitisation)」概念を用いて、理論化することを試みた。 本年度の成果は、2003年3月27-29日に米国テネシー州で開催される米国EU学会(European Union Studies Association : EUSA)の第8回世界大会において報告した(報告タイトルは'The role of security in the EU enlargement eastwards')。さらに、2002年11月には英国に出張し、政府内部資料などを中心とした文献収集を行うことが出来た。
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