2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J09937
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
村井 忠康 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カント / 超越論的演繹 / 統覚 / 経験 / セラーズ / マクダウェル / 志向性 |
Research Abstract |
平成14年度の研究ではつぎの二つのことが取り組まれた。 1,『純粋理性批判』「カテゴリーの超越論的演繹」における論証構造の解明 2,知覚経験の志向性に関するW.セラーズ、J.マクダウェルの議論の批判的検討 1については、その成果の一部を、日本哲学会第61回大会(於九州大学)において口頭発表「自己知と合理性-超越論的演繹における統覚の役割-」として報告した。この報告では、自由や合理性などの規範的概念とある種の自己知としての統覚との関係に定位することでのみ、「演繹」の基礎をなす統覚の超越論的統一という概念が理解可能なものとなることを示した。その後、第二版「演繹」における「二段階証明」の問題とこの成果を関連づけることを試みた結果、カントが経験的世界の時空的統一と超越論的統一との間の同種性を論じていることが明らかとなった。現在、この解釈は論文「超越論的演繹における経験の客観性の問題」としてまとまりつつある。 2に関しては、セラーズ哲学における知覚経験の位置づけの明確化を通じて、Mind and World以来マクダウェルが提唱している超越論的経験主義の可能性をセラーズ自身のうちにも確認することができた。他方で、言語哲学、存在論の領域での両者の対立が、志向性のとらえ方に関して決定的な相違をもたらしていることも明らかとなった。現在は、セラーズの科学的実在論とマクダウェルの常識的実在論を対比することで、この相違にみるべき哲学的論点を取り出すことに専念している。
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