2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J09958
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加藤 太一郎 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生体触媒 / デラセミ化反応 / 立体反転反応 / 光学活性体調整法 / 反応機構解析 / α-置換カルボン酸 / 破砕菌体反応 / 酵素精製 |
Research Abstract |
生体触媒を用いたα-置換カルボン酸に対するデラセミ化反応についての研究を行った。デラセミ化反応とは基質化合物の構造を全く変化させることなく、単にラセミ体を光学活性体に変化させる反応のことである。本手法を用いれば、ラセミ体を調製することと光学活性体を調製することとが同等の意味を持つことになり、これまでに報告されている光学活性体調製法(例えば速度論的光学分割)とは全く違った概念を提供することとなる。昨年度までの検討より私は、放線菌の一種Nocardia diaphanozonaria JCM3208株が様々な構造を有するα-置換プロパン酸をデラセミ化し、全菌体を用いた場合に、高い選択性にて(R)-体生成物が得られることを見出している。また本反応は脂肪酸の代謝経路であるβ-酸化経路との競合反応であること、複数の酵素が関与する複合反応機構であることを確認している。 今年度は、本反応に関与する酵素群の単離精製を目的として破砕菌体を用いた際の最適反応条件検討を行った。検討基質としては静止菌体反応条件下、高い選択性をもってデラセミ化反応が進行する2-(p-クロロフェノキシ)プロパン酸を選択した。当初、菌体を破砕すると酵素活性は著しく低下し、反応液中にデラセミ化活性を見出すことはできなかった。これは過去に報告されているデラセミ化微生物の例と同様であった。そこで破砕上清中にデラセミ化活性を見出すことを目的とし、精密な条件、具体的にはinducer、添加有機溶媒、反応温度、緩衝液の強度、pHおよび界面活性剤について検討を行い、短時間ではあるがデラセミ化酵素を安定化し、反応を進行させる条件を構築することに成功した。また補因子要求性の検討から、本反応にはATP、Mg^<2+>およびCoASHが必要であることが判明した。このことは反応中にカルボン酸が活性化される段階が存在することを示している。現在、反応中間体アナログを合成し、これを利用して多段階反応を個別の反応として追跡しており、酵素失活の原因について次第に明らかになりつつある。
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[Publications] Dai-ichiro Kato: "Microbial Deracemization of α-Substituted Carboxylic Acids : Substrate Specificity and Mechanistic Investigation"J.Org.Chem.. 68(19). 7234-7242 (2003)
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[Publications] Dai-ichiro Kato: "Microbial Deracemization of α-Substituted Carboxylic Acids"6^<th> International Symposium on Catalysis Applied to Fine Chemicals. 91-91 (2003)
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[Publications] Dai-ichiro Kato: "Microbial Deracemization of α-Substituted Carboxylic Acids"Chem.Listy. 97. 479-479 (2003)
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[Publications] 加藤 太一郎: "微生物を用いたα-置換カルボン酸のデラセミ化反応 -破砕菌体を用いた最適反応条件検討と機構解析-"第7回生体触媒化学シンポジウム講演要旨集. 30-30 (2003)
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[Publications] 加藤 太一郎: "生体触媒を用いたα-置換カルボン酸のデラセミ化反応"日本化学会第84春季年会講演予稿集. II. 1J6-53 (2004)