2003 Fiscal Year Annual Research Report
日欧における歴史的建造物保存修復活用の比較研究及び今後の日本の文化財行政への提案
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02J10020
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
太田 明子 (中川 明子) 熊本大学, 工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 歴史的建造物 / 保存 / 活用 / 法令 / 保存理念 |
Research Abstract |
1.関連書籍の収集 昨年度に引き続き、文化財保存活用関連書籍の収集を行った。 日本国内の書籍としては、世界遺産関連書籍を数多く揃え、フランス関連の書籍としては、法令関係、保存理念関連書籍を収集した。 2.アロイス・リーグルのモニュメントに対する考え方に関する研究 1 昨年度に報告を行ったフランスのDESS PAMにおいて紹介されていた、歴史的遺産の保存修復活用にあたって、指標となっている理念の検証を行い、現在の日本でもその理念が通用するのかを検討することがこの研究の目的である。 先ず、19世紀末のオーストリアの美術史家、アロイス・リーグルの1903年の小著、"Der Moderne Denkmalkultus"の第一章を読み解き、リーグルが定義したモニュメント(記念物)が持つ、以下の四つの価値、すなわち、『歴史的価値』、『芸術的価値』、『意図的な想起的価値』、『古さの価値』について、それぞれの価値がどのようなもの一であるかを検証した。 また、リーグルによるこの四つの価値のうち、芸術的価値以外の価値について、現在も、かつ、日本でも通用するものであるかどうかを検討したが、いずれも、十分通用する可能性が認められた。 これらの価値は一見至極当然のものと認識されそうだが、記念物が持つ価値として明確に示した例は、日本にはこれまで無かったように思われる。これらの言葉は歴史的建造物の保存修復活用の際、何故それを行うのか、という理由を説明する際のキーワードとしての活用が期待される。 今後、この著作の読解、分析をさらに進め、リーグルの論文の現代における有用性を明らかにし、次いで、英のラスキン、仏のヴイオレ・ル・デュクらの論、また、日本の理論との比較を行い、ヨーロッパ的理念と日本的理念の相互理解を深めることが課題である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 太田 明子: "フランスにおけるDESS PAMに関する報告と考察"2003年度日本建築学会大会(東海)学術講演梗概集. F-2. 581-582 (2003)
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[Publications] 太田 明子: "アロイス・リーグルのモニュメントに対する考え方に関する研究 1"日本建築学会九州支部研究報告;計画系. 43-3. 657-660 (2004)
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[Publications] J.Ito, Y.Hayashida, K.Horiuchi, Y.Okada, K.Hoshi, T.Katsumata, A.Ota: "New Measurements and Observations of the Treasury of Massaliotes, the Doric Treasury and the Tholos in the Sanctuary of Athena Pronaia at Delphi"Kyusyu University Press. 438 (2004)