2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J10143
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
森本 直子 (平田 直子) 北九州市立大学, 外国語学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 『古今韻表新編』 / 呉方音 / 音韻 / 寧波音 / 声母 / 韻母 |
Research Abstract |
1『古今韻表新編』が反映する呉方音の考察 『古今韻表新編』(以下、『新編』と略称する)が反映する呉方音と現代呉語諸方音における音韻的枠組みを比較対照させ、当該方言音の具体的地域を探求した。また同時に、『新編』の編纂目的などを明らかにしつつ、当該方言音の性格についても考察した。 (1)『新編』が反映する声母と現代呉方音との比較 中古音との比較において列挙した『新編』が反映する7つの声母の特徴と、現代呉語諸方音との比較考察を行った。その結果、『新編』と類似した声母の特徴を有す方言地区は北部呉語における甬江方言地区(寧波音を中心とする)であることが明らかとなった。 (2)『新編』が反映する韻母と現代呉方音との比較 次に、中古音との比較において列挙した12の韻母の特徴と、上記の結果を受けて甬江方言音との比較を行った。この12の特徴の中で、『新編』と合致するものが3つ、『新編』から現代音にまでの音韻変化として説明できるものが7つ、合致しないものはわずか2つという結果を得た。(1)(2)の考察を通じて、こうした諸特徴を統一的に説明できる方言音は甬江方音以外にないことが分かった。 (3)『新編』編纂の目的 『新編』中の「四声提要」・「読韻附識」に、作者自身の方言音をもって字音の規範を示そうとする編纂目的が記されていることを指摘した。また、作者が寧波出身であることを考慮するならば、その方言音とは寧波音であると考えることが適当であり、このことは(1)(2)の考察の結果と一致することが分かった。 2 上記の研究成果 1は、昨年、第53回日本中国語学会全国大会(早稲田大学にて)において「『古今韻表新編』が反映する呉方音」という題目で研究報告を行い、専門家の貴重な意見・批判をいただいた。その後さらに加筆修正したものを、同題目で『中国語学』に投稿した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 平田直子: "『古今韻表新編』における中古上声全濁音字について"平成14・15年度科字研究費補助金(基盤研究(C)(2))研究成果報告書『呉語読本』音声データの作成と公開 論文・翻訳編(第一冊). 39-44 (2004)
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[Publications] 平田直子: "『呉語読本』抄訳 『九美図』第28回除夕"平成14・15年度科字研究費補助金(基盤研究(C)(2))研究成果報告書『呉語読本』音声データの作成と公開 論文・翻訳編(第一冊). 67-76 (2004)