2002 Fiscal Year Annual Research Report
植物における複合環境ストレスの相互作用と耐性機構の解明
Project/Area Number |
02J10211
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
鈴木 真吾 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 強光ストレス / 塩ストレス / 損傷誘導 / 修復阻害 / シロイヌナズナ / 光化学系II複合体 |
Research Abstract |
環境ストレスへの適応・耐性の研究は、少数の例を除いて単一の環境ストレスの作用とそれに対する植物の応答を解析するものであった。しかしフィールドでは複数の環境ストレスが同時に植物を襲い、その相乗効果により単一の環境ストレスに比べ比較できないほど顕著な損傷を引き起こすことがわかってきた。よって本研究では、複合環境ストレスの相互作用を分子レベルで解析し、続いてこれに対する植物の耐性機構を解明する。さらにその成果を基に複合環境ストレス耐性植物の分子育種の基礎理論を構築することを目的とする。 本年度は、植物の本質ともいえる光合成活性、おもに環境ストレスによって傷害を受けやすい光化学系II複合体の活性を指標に複合環境ストレスの相互作用を解析したところ、強光ストレスが損傷誘導型ストレスに、また塩ストレスが修復阻害型ストレスに分類され、これら2種類の環境ストレスが組み合わされることにより顕著な相乗効果があらわれることが判明した。また、研究対象として用いたシロイヌナズナは、生殖成長期に塩ストレスを受けると生殖器官である花および種子の形成が著しく阻害されることがわかった。そこでさらに詳しい解析を行ったところ、塩ストレス下では葯における花粉の生産が強く阻害され、その影響からサヤの正常な成長および種子形成が阻害されていることがわかった。今後は、複合環境ストレスによる遺伝子発現の変化をcDNAマイクロアレイを用いて包括的に転写レベルで解析する。さらに発現レベルの調節に関与する遺伝子群を同定する。
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