2003 Fiscal Year Annual Research Report
コオロギの匂い学習神経機構のワイヤ電極法による解析
Project/Area Number |
02J10354
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松本 幸久 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | コオロギ / 匂い学習 / 長期記憶 / NO / cAMP / cGMP |
Research Abstract |
本研究は匂い学習・記憶の形成過程の神経機構を解明することを目的とする。動物の記憶の過程は性質の異なるいくつかの相に分けられるので、まず匂い学習・記憶の形成機構を薬理行動学的に調べ、コオロギにおける記憶の相の経時的な変化を明確にし、そして条件付けに伴い変化するニューロンの神経活動を記憶の各相で電気生理学的に調べる。 ミツバチにおいて条件づけ回数の違いにより作られる記憶が異なる(例えば1回刺激の条件づけで作られる記憶は短期記憶、数回刺激の条件づけで作られる記憶は長期記憶である)ことが知られている。そこでそれをコオロキでも調べたところ、4回の刺激による条件づけでは数日間減衰しない長期記憶が成立するのに対し、1回の刺激による条件づけでは訓練1日後の長期記憶が成立しないことがわかった。さらに頭部にNO発生剤,cGMP,cAMP類縁物質などを投与したコオロギに1回刺激の条件づけを行ったところ、訓練1日後の長期記憶が成立した。これらの結果から長期記憶の成立には条件づけ時のNO,cGMP,cAMPが深く関わっていることが示唆される。さらにこれらの薬物と、NO,cGMP,cAMPの合成酵素の阻害剤やサイクリックヌクレオチド制御型チャネルの阻害剤やカルモジュリン阻害剤を組み合わせて投与した実験により、NO-cGMP系、Ca^<2+>-calmodulin系、cAMP-PKAの3つの系がこの順で直列的に働くことで長期記憶が形成されることが示唆された。これは動物の長期記憶の形成過程における初めての知見である。またcAMP-PKA系やNO-cGMP系依存の記憶は、タンパク合成系が関与している従来の長期記憶より明らかに早く出現する「早い長期記憶」であることもわかった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Y.Matsumoto, S.Noji, M.Mizunami: "Time course of protein synthesis-dependent phase of olfactory memory in the cricket Gryllus bimaculatus"Zoological Science. 20. 409-416 (2003)
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[Publications] H.Watanabe, Y.Kobayashi, M.Sakura, Y.Matsumoto, M.Mizunami: "Classical olfactory conditioning in the cockroach Periplaneta americana"Zoological Science. 20. 1447-1454 (2003)