2002 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞由来の神経栄養因子とその生合成機構の解明
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02J10381
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小原 祐太郎 東北大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 1321N1ヒトアストロサイトーマ / 神経栄養因子 / 神経成長因子(NGF) / インターロイキン-6(IL-6) / スカブロニン / プロテインキナーゼC(PKC) |
Research Abstract |
われわれは1321N1ヒトアストロサイトーマ細胞の培養上清中で、神経細胞のモデル細胞であるPC12細胞を培養すると、神経様に分化することを明らかにしてきた(Brain Res.1998)。そこで、1321N1細胞を大量培養し、その培養上清中から活性因子を精製するための条件検討をおこなった。培養液中の血清濃度が低いほど活性因子の精製が容易になるため、血清濃度を通常の5%以下にして活性試験を行ったところ、血清濃度1%でも十分な活性が得られたが、0.5%または無血清条件下では、活性は非常に弱いものだった。また、培養上清を回収した後さらに細胞を培養し、培養上清を何回まで連続回収できるか検討したところ、連続回収2回目までは、問題なく活性のある上清が回収できたが、3回目以降は細胞の状態および回収した上清の状態から判断して、連続回収は不可能だった。今後、より大量培養に適した培養上清の回収の予備試験を行う予定である。 また、活性担子菌ケロウジ由来のスカブロニン類を用いて、1321N1ヒトアストロサイトーマ細胞からの神経栄養因子の分泌制御機構の解明をおこなってきたところ、この薬物はプロテインキナーゼC-ζ(PKC-ζ)を活性化し、神経成長因子(NGF)などの合成、分泌を促進させることを明らかにした(Eur.J.Pharmacol. 1999;Mol.Pharamacol.,2001)。PKC-ζは、ほとんどすべての細胞に発現しているため、スカブロニン類がグリア細胞以外の細胞でも何かしらの作用を発揮すると考え、各種細胞でスカブロニン類の効果を検討した。ウシ大動脈血管内皮細胞をスカブロニン類で刺激すると、1321N1細胞と同様に神経栄養因子の合成、分泌が促進されたが、マウス繊維芽細胞やラット血管平滑筋細胞においては、スカブロニン類の神経栄養因子の合成、分泌促進作用は認められなかった。また、ウサギ血小板においては、スカブロニン類は、トロンボキサンA_2およびADPによる凝集反応を顕著に抑制した。今後、これらのグリア細胞以外の細胞で認められたスカブロニン類の作用とPKC-ζとの相関を検討していく予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Yutaro Obara: "The signaling pathway of neurotrophic factor biosynthesis"Drug News and Perspective. 15. 290-298 (2002)
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[Publications] Yutaro Obara: "β-Eudesmol induces neurite outgrowth in rat pheochromocytoma cells accompanied by an activation of mitogen-activated protein kinase"J.Phamacol.Exp.Ther. 301. 803-811 (2002)