2002 Fiscal Year Annual Research Report
個人・家・社会三者の関係を正確に把握しつつ新たな近世武家社会像を構築すること
Project/Area Number |
02J10447
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀田 幸義 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 近世武家社会 / 身分格式 / 儀礼 / 名前 / 個 / 家 / 実名 / 禁字 |
Research Abstract |
新しい近世武家社会像の構築を目指し、従来スポットの当たらなかった身分制下の「個」というものに着目しそこから当時の武家社会像を描き出すこと、それを踏まえて「家」論を展開することを課題に研究を続けてきた。具体的には、仙台藩の武家を対象に「身分格式をめぐる問題」、「儀礼をめぐる問題」、「名前をめぐる問題」といった三つのテーマについて取り上げ、その実証的研究成果をいくつかの学術雑誌に発表してきた。平成14年度は、それら旧稿への加筆・修正と新稿の作成を行った。 旧稿を手直しするにあたっては、基本的な誤りを修正することは勿論のこと、先行研究を読み直し近年に発表された最新の研究動向とも関わらせながら論旨に広がりを持たせ、かつ、何度も調査を行うことで新史料の発掘にも力を注ぎ論拠の補強を行った。なお、この史料調査の結果、興味深い史料を発見し新稿作成への足がかりとすることができた。 新稿は、近世武家社会における実名敬避慣行とその法令化を取り上げたもので、仙台藩が家中の実名(諱)を対象として実施した禁字法令の創出過程とその歴史的背景を明らかにしている。藩士たちの家譜を素材に、同藩門閥層の歴代家長が名乗った実名(諱)の漢字を一字ずつチェックし表化することで、禁字法令が単に近世初頭からの慣習を成文化したものではなく新たに創出されたものであることを確認した上で、その形成過程や法令の内容について考察した。また、幕府や他藩の事例についても言及してはいるが、本格的な考察は今後の課題として残さざるを得ず、来年度以降に実施するつもりでいる。
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