2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J10457
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 くみ 東北大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 憲法学 / 法哲学 / コミットメント |
Research Abstract |
本年度は、憲法学におけるコミットメントの意義・本質の究明に努めた。憲法においてコミットメントの意義が問題となるのは、多様な意見や世界観の対立する中で人々が共生する必要があるからである。今日、人々の様々な意見の対立を前に、憲法におけるコミットメントの重要性はますます高まっている。コミットメントは一般に、経済学の分野では、個人がある目標を達成するために未来のある時点での選択肢をそれ以前の時点で限定する戦略的行為と理解されている。但し、憲法におけるコミットメントに、経済学におけるコミットメント理論を直接あてはめることはできない。コミットする主体、コミットメントの対象(内容)、コミットメントを達成するための外的機構の三点が、憲法におけるコミットメントに独自の問題である。たとえば、コミットする主体を具体的個人と設定するかあるいは抽象的国民全体と設定するかが、いわゆる「過去の手による支配」の問題として議論されている。また、コミットメントの対象は憲法上の価値なのか手続きなのかという問題が、討議民主主義の議論として展開されている、コミットメントを達成するための外的機構については、「司法審査の民主的正統性」の問題や「憲法改正」の問題が、コミットメントをよりよく達成する制度がいかなるものかという観点から論じられている。 以上のような研究成果を基に、特にアメリカ憲法学における「自己統治(self-government)」の問題を中心として、論文「自己統治とコミットメント」を執筆した。この論文で、コミットメントの多岐にわたる問題圏の中で憲法の基礎理論にとって最も本質的と思われる側面を取り出し、作品化することによって、アメリカ・ドイツ・フランスの三国において近年なぜ憲法学におけるコミットメントが共通して同時代的に問題とされているかについての法理論的理由を明らかにすることができた。
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Research Products
(1 results)