2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J10469
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 正治 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 抗生物質 / N1999-A2 / 分子認識 / DNA切断 |
Research Abstract |
抗生物質N1999-A2の分子構造レベルでの反応機構解析、および構造活性相関研究に向けて、4種類の立体異性体と、ナフタレン環上の置換基を変換した類縁体を合成した。鍵工程である9員環化の効率が、前駆体アルデヒドの4,9,11,13位の相対立体化学に大きく依存することを見いだした。特に、5,6位での閉環においては、9位と11位の酸素官能基同士がシス配置をとっていることが収率の向上に重要であった。4種類の立体異性体のうち、天然物のC11-エピマーとエナンチオマーは、光延エステル化反応を駆使して、効率的に合成した。最終生成物の単離・精製は、化合物が不安定であるために困難であったが、低温、暗室下、中圧ジオールカラムを用いる方法で達成した。天然型と、エポキシドの立体化学が異なるジアスレテオマーの両化合物について芳香環化実験を行い、それぞれのチオールによる活性化機構を明らかにした。チオール付加の面選択性が、エポキシドではなくC11-ナフトエートの立体障害に依存することが明らかになった。合成した化合物群のDNA切断実験を行った結果、活性発現には、11位の立体化学が天然型であることが重要であることがわかった。特に、11位が天然型で、エポキシドと13位水酸基の立体化学が非天然型であるジアステレオマーは、天然物のおよそ2倍の強度のDNA切断活性を示すことがわかった。天然物を凌ぐ、機能分子の創出に成功したことになる。また、ナフタレン環上の6'-クロロ基と10'-水酸基、エポキシド、および13位水酸基の立体化学は配列選択性には関与しないことがわかった。以上の結果を考察するため、コンピュータモデリングを用いてDNA切断の反応機構解析を行った。その結果、天然型は6位のラジカルが、C11-エピマーは2位のラジカルが、それぞれDNA鎖からの水素引き抜きに関与していることが示唆された。
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