2002 Fiscal Year Annual Research Report
地震波速度・異方性構造データによる地殻内流体分布の推定
Project/Area Number |
02J10534
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中島 淳一 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 東北日本弧 / マントルウエッジ / 地震波低速度域 / メルト / S波偏向異方性 |
Research Abstract |
地震波速度構造を用いて,マントルウエッジに見出されていた地震波低速度域内の流体の存在形態とその体積率の推定を行った.減衰構造から推定した温度構造を考慮に入れると,低速度域内にはメルトが分布すると推測される.メルトを含む空隙のアスペクト比は深さ90km付近では大きく(0.1程度),より浅部では小さい(0.01-0.1)という結果が得られた.また,メルトは深部で5vol%程度,浅部で1vol%程度存在することが明らかになった.これらの結果は,低速度域内ではその深さによってメルトの存在形態が異なることを示しており,メルトの輸送メカニズムの解明に新たな知見を与える重要な結果である.岩石学的に得られている結果と併せて解釈すると,深さ90km付近ではメルトは周囲の岩石と平衡状態で存在しているのに対し,より浅部では,非平衡状態,すなわちメルトポケットとして存在していることを強く示唆している. さらに,S波偏向異方性解析も行い,マントルウエッジの異方性構造を明らかにした.異方性解析の結果は,地震波速度構造の結果と調和的であり,マントルウエッジ内の低速度域にその原因があることと推測される.異方性構造はマントルウエッジ内の物質の流れを反映していると考えられ,マントル内の対流の方向や応力場に関する知見を得ることができる重要な量である.今回の結果では,火山フロントを境にしてその前弧側と背弧側で結果に明瞭な違いが認められ,地震波速度構造だけではなく地震波減衰構造からも,東北日本弧下マントルウエッジの性質の違いを抽出することができた.
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