2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J10598
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 守人 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 進化生物学 / 個体群生態学 / Euhadra / 種分化 / 伊豆 / 地理的変異 |
Research Abstract |
伊豆諸島は以前から,島ごとにシモダマイマイの殻の模様が,著しく異なると報告されており,これに関して「カタツムリが鳥などの捕食者に対して適応し,蛇に擬態している為である.」といった,ユニークな仮説まで存在する.しかし,これらの議論は,定性的なものが多く,客観性炊けている点が問題である.そこで,私はカタツムリの殻に観られるバンドの数と,殻の地色というシンプルかつ定量化が可能な形質を用いて伊豆諸島のシモダマイマイが,島ごとに特徴的な殻の形態を有しているかについて検討した.また,ミトコンドリア16SrRNAの系統解析によって起源集団と推定した伊豆半島の個体群とも比較した.その結果,伊豆諸島大島,神津島,新島,式根島において伊豆半島の個体群よりも大きな多様度を有することが明らかになった.また,これらの島における個体群にはミトコンドリア16SrRNAの変異がほとんど存在しなかった.このことから,単系統のシモダマイマイは伊豆半島から各島に海洋分散し,個体群に働く強い遺伝的浮動が働いているにも関わらず,頻度依存的な機構によって外部形態が多様化したと考えられる. 伊豆諸島新島のシモダマイマイは同一集団内に殻の色に黒と白という極端な一型が存在している.これらの二タイプは,他の島では観られないことから,新島における独自の進化をとげてきたと考えられる.そこでこのような極端な分化がなぜ同所的に起こるのか,という点に注目し,この個体群を生態的,遺伝的な側面から研究した.その結果,黒い個体と白い個体の間には,気温に依存して活動量が異なる,という生態的な差異が観察された.また,マイクロサテライトDNAの解析により,同一集団内で遺伝的な分化が起こっている可能性も示唆された.これらのことは,新島の西暦886年の大噴火からわずか1100年という短い時間で同所的な種分化が起こりうる可能性を示唆する.
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