2002 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物における共鳴非弾性X線散乱の理論的研究
Project/Area Number |
02J10611
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
近藤 浩 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 金属絶縁転移系 / マンガン酸化物 / 巨大磁気抵抗 / 電荷・軌道整列 |
Research Abstract |
Mn酸化物において、二重縮退したMn3de_g軌道の自由度により、軌道秩序等の興味深い現象が数多く見られる。軌道秩序状態を調べる手法として、共鳴X線散乱等がある。一方、軌道秩序状態からの励起を調べる有力な手法が共鳴非弾性X線散乱である。共鳴非弾性X線散乱は、入射X線と散乱X線のエネルギー差、運動量差及び散乱強度を測定することにより、系の励起について詳細に調べることが可能な手法である。 最初に、本研究において、軌道秩序状態のLaMnO_3における共鳴非弾性X線散乱が調べた。この研究により、軌道秩序状態におけるMn酸化物のモットギャップ間の励起は異なる対称性を持つ軌道間の励起であることを明らかにした。 最近、正孔をドープしたLa_<1-x>Sr_xMnO_3(x=0.2,0.4)の軌道無秩序状態における強磁性金属相において、共鳴非弾性X線散乱の実験がSPring-8においてなされた。この実験において、正孔をドープするにつれて、2[eV]以下の低エネルギー励起のスペクトル強度が増加する等、興味深い現象が観測された。次に、本研究では、正孔をドープしたMn酸化物における強磁性金属相の共鳴非弾性X線散乱を調べ、軌道無秩序状態における励起を調べた。計算手法として数値的厳密対角化法を用いて二重縮退したMn3d電子のハバード模型のハミルトニアンを対角化した。電荷密度相関関数を計算することにより共鳴非弾性X線散乱の微分散乱断面積のドーピング依存性を調べた。計算の結果、励起スペクトルには、バンド内励起とバンド間励起が見られ、特に正孔をドープするにつれ、バンド内励起のスペクトル強度が増加した。これらの特徴は最近行われたLa_<1-x>Sr_xMnO_3(x=0.2,0.4)における共鳴非弾性X線散乱スペクトルの実験結果を定性的に説明すること等を明らかにした。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] T.Inami, T.Fukuda, J.Mizuki, S.Ihihara, H.Kondo, H.Nakao, T.Matsumura, K.Hirota, Y.Murakami, S.Maekawa, Y.Endoh: "Orbital excitations in LaMnO_3 stydied by resonant inelastic x-ray scattering"Physical Review B. 67. 045108 (2003)