2002 Fiscal Year Annual Research Report
白血球崩壊毒素ロイコシジン変換ファージの感染機構および毒素遺伝子発現調節機構
Project/Area Number |
02J10702
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
成田 佐知子 東北大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Staphylococcus aureus / Panton-Valentine Leukocidin / PVL converting phage |
Research Abstract |
PVL変換ファージである、φSLTの宿主への吸着機構の解明を行なった。まず、φSLTは当研究室で保有する全てのS.aureusに対して吸着する事、S.aureus以外のStaphylococus属の中ではS.xylosusにのみ吸着し、その他のStaphylococus属に対しては吸着しない事を明らかにした。S.aureusのファージは従来、peptideglycanとテイコ酸の複合体を認識して結合すると言われているが、S.aureusとS.xylosusではpeptideglycanに結合しているテイコ酸、リポテイコ酸の種類が共通している。そこでφSLTはこのデイコ酸の構造を認識していると推定した。リポテイコ酸の認識機構としてListeria monocytogenesの表層タンパク質であるInlBが有するGW moduleが関与しているという報告が出されたが、私は、φSLTのminor tail proteinと推定されるORF636のC末端側に96bpから成るGW残基を含んだ2回の繰り返し構造が存在する事を見い出した。ORF636が宿主への結合に関与していることを確かめるため、ORF636のHistag融合タンパク質を大腸菌で発現させ、Staphylococcus標準株との結合実験を行なった。その結果、S.aureusとS.xylosusのみにORF636が結合することを確認した。さらにマウスを用いて作成した抗ORF636抗体をφSLTファージ液に加え、菌液とともに、soft agarose重層プレートへ植菌した結果、φSLTのプラーク形成阻害が確認され、ORF636が宿主への結合タンパク質であることを確認し、黄色ブドウ球菌のファージとしては初めて、宿主への結合に関与するORFを同定した。 また、φSLTが感染しないgua変異株について、Real Time PCRを用いた解析を行なった。その結果、gua変異株ではファージの後期転写が阻害されているためにバーストサイズの低下が生じ、見かけ上はファージの感染が生じないことを明らかにした。現在、GMP関連物質と転写阻害との関係を調査中である。
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