2002 Fiscal Year Annual Research Report
視蓋/小脳の発生・分化におけるFgfシグナル伝達経路の解析
Project/Area Number |
02J10720
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 達也 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中脳胞 / 後脳胞 / 視蓋 / 小脳 / Fgf8 / シグナルトランスダクション / ERK / 神経管 |
Research Abstract |
鳥類以下の脊椎動物では中脳胞背側から視覚の中枢である視蓋が分化し、菱脳胞の最も前側の後脳胞背側からは小脳が分化する。ニワトリ胚を用いた移植実験により中脳/後脳境界領域(峡)は視蓋/小脳のオーガナイザーとして働き、その本体はFgf8だと考えられている。私のこれまでの研究により、峡部周辺の神経上皮はFgf8シグナルの強弱によりその発生運命の方向が決定されることが明らかとなった(Sato et al.,Development 128,2461-2469,2001)。すなわち、Fgf8シグナルが強い後脳胞は小脳として分化し、シグナルの弱い中脳胞は視蓋として分化する。平成14年度は、Fgf8シグナルの下流にRas-ERKのシステムが働いているかについて検討した。活性型ERKに対する抗体を用いて免疫組織化学的解析を行ったところ、Fgf8mRNA発現領域においてERKが強く活性化されていることを確認した。予定中脳領域のERKは比較的弱く活性化されていた。Fgf受容体の阻害剤SU5402を峡部に作用させると、ERKの活性は消失したことから、ERKの活性化はFgfシグナルに依存することが明らかとなった。ところで、Fgf8aを強制発現させると視蓋は肥大化し、Fgf8bを強制発現させると中脳胞背側は小脳へ分化する。Fgf8aを強制発現させると中脳胞および後脳胞でERKは活性化されないが、Fgf8bではERKが強く活性化されることを見出した。したがって、ERKの活性化状態と中脳/後脳の発生運命は強く関連づけられることが明らかとなった。さらに、優位抑制型Rasの強制発現により、後脳胞背側から異所的な視蓋が分化することを形態/組織学的に確認した。
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Research Products
(1 results)