2002 Fiscal Year Annual Research Report
いじめ被害体験からのリズィリエンシー(復元力):その構成要素と形成要因の解明
Project/Area Number |
02J10809
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荒木 剛 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | いじめ被害 / リズィリエンシー / コーピング / 対人的ストレス / 抑うつ |
Research Abstract |
いじめ被害の後遺症としてよく指摘されるものに抑うつがある。しかし、その発症と症状の持続のメカニズムについて言及した研究は少ない。抑うつ症状の発症メカニズムについては、Beck(1967)を始めとして、素因-ストレスモデルのパラダイムに基づく研究が多く行われている。これらのモデルに従うと、いじめ被害者が抑うつ的であるのは、いじめが被害者に抑うつへの素因となる何らかの脆弱性を形成するからではないかと考えられる。そして、いじめ被害からのリズィリエンシー(復元力)とは、脆弱性の形成を阻み、さらにその機能を妨害する要因として定義することができる。 本年度はいじめ被害からの回復(後遺症としての抑うつ症状の消失)について全国規模の調査を実施する計画であったが、被害体験者に不快な記憶をむりやり想起させるという倫理的問題と、調査の内容がプライバシーに深く踏み込む内容とならざるを得ないことを改めて考慮し、調査対象者を調査目的の説明と協力の意思確認等に十分に時間と労力をかけられる大学生・専門学校生に限定した。加えて、調査対象者に不快感を感じさせないよう、予定していた質問項目を一から検討し直すという作業を行った。それにより調査の実施が大幅に遅れてしまったため、いじめ被害からのリズィリエンシーとして8種類のコーピングスタイルを採り上げ、回顧的方法による予備調査を実施するに止まった。 その結果、被害者意識が現在の対人的ストレスに関係なく抑うつを高めること、過去に身体的被害を多く受けた群において現在の接近・問題焦点型で行動的なコーピングスタイル(情報収集)が抑うつを弱めるという結果が得られた。予想されたほどコーピングスタイルの効果が強くなかったことから、いじめ被害からのリズィリエンシーとしてコーピングスタイルの他により有力な要因があることが示唆される。この調査の結果を発表するべく、現在、論文を執筆中である。
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Research Products
(2 results)