2003 Fiscal Year Annual Research Report
いじめ被害体験からのリズィリエンシー(復元力):その構成要素と形成要因の解明
Project/Area Number |
02J10809
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荒木 剛 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | リズィリエンス / いじめ被害 / リズィリエンシー / 保護因子 / 脆弱性因子 / コーピングスタイル / 対人的ストレスイベント |
Research Abstract |
リズィリエンシー(resiliency)という用語は、深刻なストレスイベントに曝されたにも関わらず、良好な適応を取り戻した者が有する個人内要因として概念化されたものである。しかしその内容には研究間で違いがあり、曝露されるストレスイベントによってリズィリエンシーの内容も異なっている。そのためリズィリエンシーという用語は誤解を招きやすいとして、これに批判的な研究者も多い。むしろ、深刻なストレスイベントへの曝露と良好な適応状態の達成という2点を同時に満たしている状態をリズィリエンス(resilience)と呼び、その実現に寄与する要因を探る方が建設的だという意見が増えている。"特性"としてのリズィリエンシーから"状態"としてのリズィリエンスへと、研究の流れがシフトしているのである。 このような現状を踏まえ、本年度はいじめ被害者におけるリズィリエンスを研究の対象に据えることにした。リズィリエンスに寄与する要因としては、脆弱性因子と保護因子の2種類がある。これらはそれぞれ、深刻なストレスイベントの適応状態に対する負の影響力を増大させる、あるいは緩和する要因を指す。従来のリズィリエンシーという概念は、保護因子の1種と考えられる。本年度は昨年度の調査を発展させ、いじめ被害者の青年期後期の適応状態に対する脆弱性因子として対人的ストレスイベントを、保護因子としてはコーピングスタイルを採り上げ、大学生・専門学校生を対象に質問紙調査を実施した。 その結果、いじめ被害者と非被害者とでは現在の適応状態に対する対人的ストレスイベント及びコーピングスタイルの効果に違いが見られた。いじめ被害者では「他者に気を使う」といった種類の対人的ストレスイベントが適応状態を悪化させ、「他者に助言を求める」といった種類のコーピングスタイルが適応状態を改善していた。この調査結果は、一連の学会発表及び投稿論文として発表された。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 荒木 剛: "いじめ被害におけるリズィリエンス(resilience)を探る試み -変数焦点型アプローチによる検討(1)-"東北心理学研究. 53(印刷中). (2004)
-
[Publications] 荒木 剛: "いじめ被害体験者における抑うつ発症メカニズムについて(1) 〜素因-ストレスモデルによる予備的検討〜"日本心理学会第67回大会発表論文集. 1135 (2003)
-
[Publications] Tsuyoshi Araki: "How do victims of childhood bullying cope with current interpersonal stressors? Preliminary findings"Tohoku Psychologica Folia. 61. 55-61 (2003)
-
[Publications] Tsuyoshi Araki: "Resilience in a personal history of peer victimization"Society for Personality and Social Psychology Annual Meeting. 206 (2004)
-
[Publications] 荒木 剛: "いじめ被害におけるリズィリエンス(resilience)を探る試み -変数焦点型アプローチによる検討(2)-"日本発達心理学会第15回大会発表論文集. 494 (2004)
-
[Publications] 荒木 剛: "諸外国のいじめの現状(3) -アメリカ-"いじめ・いじめられる青少年の心 -発達臨床心理学的考察-. 80 (2004)