2004 Fiscal Year Annual Research Report
いじめ被害体験からのリズィリエンシー(復元力):その構成要素と形成要因の解明
Project/Area Number |
02J10809
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荒木 剛 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | リズィリエンス / いじめ被害体験 / リズィリエンシー / 保護因子 / 脆弱性因子 / コーピングスタイル / 対人的ストレスイベント |
Research Abstract |
リズィリエンシー(resiliency)という用語は、深刻なストレスイベントに曝されたにも関わらず、良好な適応を取り戻した者が有する個人内要因として概念化されたものである。しかしその内容には研究間で違いがあり、曝露されるストレスイベント(危険因子)によってリズィリエンシーの内容も異なっている。そのためリズィリエンシーという用語は誤解を招きやすいとして、これに批判的な研究者も多い。むしろ、深刻なストレスイベントへの曝露と良好な適応状態の達成という2点を同時に満たしている状態をリズィリエンス(resilience)と呼び、その実現に寄与する要因を探る方が建設的だという意見が増えている。"特性"としてのリズィリエンシーから"状態"あるいは"結果"としてのリズィリエンスへと、研究の流れが大きくシフトしつつあるのである。 このような現状を踏まえつつ、本年度は昨年度に引き続いて青年期後期におけるいじめ被害体験者のリズィリエンスの達成に寄与する諸要因について質問紙調査を行った。リズィリエンスの達成に寄与する保護因子としてコーピングスタイルを、脆弱性因子としては対人的ストレスイベントを採り上げて大学生及び専門学校生を対象に調査を実施したところ、いじめ被害体験者は青年期後期において特に対人的ストレスイベントを多く体験しているわけではないにも関わらず、非被害体験者よりも適応状態が悪い傾向が見られた。この傾向は男性の方が強く、いじめ被害開始時期及びいじめ被害の内容は無関係であることも同時に示された。また、被害体験者においては保護因子として問題解決型・サポート希求型コーピングが補償的に機能していることを示唆する結果が得られた。この質問紙調査の結果は学術論文としてまとめられ、現在査読中である。
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Research Products
(3 results)