2002 Fiscal Year Annual Research Report
大強度の原子炉反ニュートリノを用いた長基線ニュートリノ振動現象の研究
Project/Area Number |
02J10836
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中嶋 享 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ニュートリノ / ニュートリノ振動現象 / 時間応答特性 / 較正 |
Research Abstract |
所属する研究機関では、1000トンの液体シンチレータを用いた反ニュートリノ検出器(KamLAND)を用いて、原子炉反ニュートリノの観測によるニュートリノ振動現象の解明を続けてきた。これに関連し、本年度、検出器の主要要素である1325本の17インチ光電子増倍管の時間応答特性に対する較正を行なった。 測定の光源として窒素レーザによる波長500nmのレーザパルス光を使用し、検出器の液体シンチレータ中心部に設置した光ファイバ先端部から全方向へ出力した。そして、このレーザーパルス光による各光電子増倍管の出力波形の立上り時刻と出力電荷の関係をエレクトロニクスの出力カウント値を用いて解析した。 その結果、時間応答特性は光電子増倍管の出力電荷のカウント値に対して依存性があり、基本的には電荷の対数の2乗関数として表すことができた。また、この測定結果を用いて、各光電子増倍管に対する印加高電圧や信号ケーブルの長さが異なることなどが影響する出力時刻への補正を行なった。検出器全体の1p.e.相当光に対する時間分解能は当初の6ns程度から1.98nsまで向上し、反ニュートリノ検出事象数の系統誤差を減少させることができた。 この測定は検出器のエレクトロニクスの改良などによる測定条件の変化に対応するため、今年度は5回行なった。そして、測定条件が変化していなければ時間応答特性の長期安定性が保たれていることが確かめられ、今後はこの程度の頻度で測定を続ければ十分であることがわかった。一方、各測定の間に少数の光電子増倍管に発生する時間応答特性の変化に対応するために、通常の反ニュートリノ測定時間内に検出器中心部で検出した宇宙線ミュー粒子による事象の解析により、時間応答特性の電荷に依存しない成分に対する補正をさらに加えることにしている。
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