2004 Fiscal Year Annual Research Report
2層系量子ホール状態におけるマクロ量子コヒーレンスの検証
Project/Area Number |
02J10839
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
寺澤 大樹 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子ホール効果 / 2次元電子系 / ジョセフソン効果 / 2層系量子ホール効果 / ソリトン格子相 / 整合-非整合相転移 / アハラノフ・ボーム効果 / 面内磁場 |
Research Abstract |
本年度は,量子ホール状態においてジョセフソン効果につながる巨視的コヒーレンスが最もよく現れる2層系のランダウ準位占有率ν=1の量子ホール状態について,さらに詳しく研究した。この系の巨視的コヒーレンスを研究する手段として,アハラノフ・ボーム効果によって層間の位相差を変化させる面内磁場を加えることは,非常に有力である。この面内磁場に対する量子ホール状態の変化を磁気輸送現象の測定を通して詳しく調べたところ,量子ホール状態であるのに磁気抵抗がゼロに落ちず,ピークが発生する領域が存在することがわかった。この領域について抵抗の温度変化,面内磁場依存性を測定した結果,層間の位相差が2π急激に変化する部分(ソリトン)が一定の間隔で並んだ状態(ソリトン格子相)であることがわかった。この発見は,量子ホール状態において巨視的なコヒーレンスが失われたことで抵抗が発生することを明確に示唆しており,非常に興味深い結果である。また,これまで2層系ν=1量子ホール状態に面内磁場を加えた時の実験結果としては,活性化エネルギーの測定結果に異常が見られることが知られており,整合 非整合相転移として解釈されていた。本研究は,さらに踏み込んだ知見を与えるもので,非整合相にはソリトン格子相と定位相非整合相が存在し,面内磁場を大きくすることで,ソリトン格子相が定位相非整合相に漸近する様子を示している。また,面内磁場と総電子密度に対する2層系ν=1量子ホール状態の相図も作成することができ,相境界線の変化から,電子同士の相互作用について重要な実験データを提供することができた。 この研究結果は,近く主要な学術雑誌に投稿する予定である。
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Research Products
(1 results)