2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J10848
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮川 正人 東北大学, 大学院・工学研究科・日本学術振興会 特別研究員(DC1)
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Keywords | β-Mn合金 / ネール温度 / スピン揺らぎ / 圧力係数 / 電子比熱係数 / 熱膨張係数 |
Research Abstract |
β-Mnは極低温に至るまで磁気秩序を形成しないが、置換元素がMnサイトIに置換されると長距離的な磁気秩序である反強磁性を示し、対照的にMnサイトIIに置換されると短距離的な磁気秩序であるスピングラス的な磁性を示す。また、近年はフラストレートした結晶構造がβ-Mnの磁性に多大な影響を与えている可能性が指摘され、遍歴電子フラストレート系磁性体の観点からも注目されている。 近年の研究報告がごく限られているサイトIに置換され、反強磁性を示すβ-Mn合金の比熱測定および熱膨張測定を行いスピン揺らぎの観点から議論を行なった。遍歴電子反強磁性の極限にあたる弱い反強磁性においては、比熱測定より求められる電子比熱係数γがネール温度T_Nの3/4乗に比例することが理論的に導かれている。白金族であるRu, Os, Irで置換したβ-Mn合金のγ-T_N^<3/4>_Nプロットにおいて低濃度組成では直線関係を満たすが、置換元素濃度の増加に伴い徐々に直線から逸脱し、γはバンド計算から求められる値程度に小さくなることから、弱い反強磁性から遍歴電子系と局在電子系の中間的な反強磁性へと変化することが明らかになった。また、常磁性である室温の熱膨張係数αは低濃度組成では非常に大きく、熱的なスピン密度の振幅の増加は顕著であるが、高濃度組成になるにつれてαは小さな値となりスピン揺らぎの影響は弱くなる。また、αをT_Nに対してプロットすると、あるT_Nでのαは置換元素の種類に依存しないことから、あるネール温度でのγおよびαの値は置換元素の種類に依存せず、白金族系では基底状態だけでなく常磁性領域でのスピン揺らぎの大きさも置換元素の種類に依存しないことを明らかにした。 また、β-MnOs合金の圧力中電気抵抗測定より、ネール温度は負の圧力依存性を示し、Osの増加に伴い圧力係数は小さくなることを明らかにした。圧力係数の組成依存性はγおよびαの組成依存性から得られた磁気状態の変化とよく対応する。以上の結果は、日本金属学会および日本物理学会において発表された。
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