2003 Fiscal Year Annual Research Report
年周期性を考慮したダム放流水が河川底生動物相に与える影響メカニズムの解明
Project/Area Number |
02J10855
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 幸三 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 河川底生動物 / 生息地の分断化 / ダム / RAPD(Random Amplified Polymorphic DNA) / DNA多型 / 遺伝子流動 / 遺伝距離 / ヒゲナガカワトビケラ |
Research Abstract |
本研究は河川底生動物に対するダム放流水の影響メカニズムを解明し,河川生物相への影響を最小化するダムの運転・管理手法の提案を目的としている.本年度は主にダム湖の上下流側に生息する底生動物個体群のDNA多型をRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)法により調査し,ダム湖による生息地の分断化がダム湖上下流間の遺伝子流動(遺伝子の個体群間の移動)の低下に及ぼす影響評価を行った.調査は田瀬ダム,遠野ダム(岩手県),大倉ダム(宮城県),関柴ダム(福島県),下久保ダム(群馬県),刀利ダム,室牧ダム(富山県)の計七つのダムを対象に行った.これらはダムの提高やダム湖の湛水面積などの規模が大きく異なるため,生息地分断の規模が遺伝子流動の阻害度に影響するかの検証を行う上で適したダムの選定となっている.阻害の有無や程度は,ダム上下流間のNeiの遺伝距離をコントロール河川(ダムがない河川)の値と比較することで評価した.対象種はウルマーシマトビケラ,ヒゲナガカワトビケラ,クロマダラカゲロウの三種とした. DNA多型実験および解析は現在もなお継続中だが,これまでにも幾つかの興味深い結果が明らかにされつつある.例えば,7つのダム湖の中で最も湛水面積が大きな田瀬ダムの上下流問でヒゲナガカワトビケラの統計的有意な遺伝的分化が検出された.ただし,この遺伝子流動の低下に伴う遺伝的多様性の低下は見られなかった.一方,7つのダムの中で面積が4番目に大きな大倉ダムではヒゲナガカワトビケラの統計的有意な遺伝的分化は検出されなかった.これらの研究成果は第38回日本水環境学会年会(2004年3月札幌)に発表している.来年度も引き続き残りのサンプルの解析を行っていく予定である.
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 渡辺幸三, 吉村千洋, 小川原享志, 大村達夫: "Pulse型の人為的インパクトを受けた河川底生動物の回復予測モデル"土木学会論文集. No.748/VII-29. 67-79 (2003)
-
[Publications] 渡辺幸三, 吉村千洋, 小川原享志, 大村達夫: "生態学的パラメータによる河川底生動物群集の動態特性の評価"土木学会論文集. No.734/VII-27. 99-110 (2003)
-
[Publications] 小川原享志, 渡辺幸三, 吉村千洋, 大村達夫: "RAPD法によるHydropsyche orientalis (Hydropsychidae : Tricoptera)の遺伝的多様性に基づく河川環境評価 -宮城県名取川水系を例として-"水環境学会誌. 26・4. 223-229 (2003)