2003 Fiscal Year Annual Research Report
北部ベトナム仏教寺院の伽藍構成の変遷過程に関する基礎的研究
Project/Area Number |
02J10906
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大山 亜紀子 日本大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | ベトナム社会主義共和国 / 仏教寺院 / 伽藍構成 / 変遷 / 上殿 / 前堂 / 平面構成 / 小屋組形式 |
Research Abstract |
本年度は、これまでの調査・研究の成果のまとめとして論文の執筆を中心に進めた。 伽藍の中心的機能をもつ上殿(本尊をまつる建物)と前堂(信者の礼拝空間)について、それぞれの平面と小屋組の形式の変遷に関する論文を執筆し、査読の結果、日本建築学会計画系論文集への掲載が決定した(11.研究発表参照)。 本研究の主題である北部ベトナムにおける伽藍の変遷過程については、学位論文「北部ベトナム仏教寺院の伽藍の変遷過程に関する研究-14世紀から20世紀における木造建築の技術史的考察を中心にして-」において、14世紀から20世紀における伽藍の変遷過程を、編年的に4期に区分できることを結論としてまとめた。本論文では現地での調査資料を用いて、平面と小屋組について各時期の技術的特徴と各建物の造営年代を検証し、その成果を用いて伽藍の変遷過程を解明した。第1期の14世紀から16世紀は、本尊をまつる上殿が独立して造営されていたこと、第2期の17世紀から18世紀に現在の伽藍の基盤が形成されたことを明らかにした。さらに、第3期の18世紀中頃から末期にかけて、第2期に定型化した伽藍の要素を集約した伽藍が造営され、同時に上殿の閉鎖性が失われた。第4期の19世紀から20世紀に、各建物を繋ぎ合わせて外周をレンガ壁で囲う現在の典型的な伽藍が完成したことを明らかにした。 本年度の調査では中国南部地域の木造建築との関連性を比較検討するために、中国国境に位置するベトナム・ランソン省でゼネラルサーヴェイを実施した。ランソン省に現存する木造遺構には、ハノイ市近郊の遺構に比べ、部材の組み合わせなどに中国的な要素が見受けられた。また、中部地域で発展した斜梁と束を用いた小屋組形式に酷似した遺構(寺院)もみられた。第4期(19〜20世紀),における北部の木造遺構には中部の建築技術との関連がみられることからも、今後、ベトナム木造建築の発展を検討する上で、ベトナム中部および中国国境沿いの地域における再調査が必須であると考えている。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 大山亜紀子: "北部ベトナム仏教寺院の伽藍の変遷過程に関する研究 -14世紀から20世紀における木造建築の技術史的考察を中心にして-"日本大学大学院理工学研究科(博土後期課程)学位論文. 1-242 (2004)
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[Publications] 大山亜紀子, 重枝豊, 片桐正夫: "北部ベトナム仏教寺院の上殿の基本構成とその変化について"日本建築学会計画系論文集. No.576. 191-198 (2004)
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[Publications] 大山亜紀子, 重枝豊, 片桐正夫: "北部ベトナム仏教寺院の前堂の平面および小屋組形式の変遷について"日本建築学会計画系論文集. 未定. (2004)
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[Publications] 大山亜紀子, 重枝豊, 片桐正夫: "崑山寺上殿の基本構成に関する一考察 ベトナム仏教寺院の総合研究その12"日本建築学会2003年度大会学術講演梗概集. F-2 建築歴史・意匠. 614-615 (2003)
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[Publications] 大山亜紀子, 重枝豊, 片桐正夫: "北部ベトナム仏教寺院の伽藍の基本構成について ベトナム仏教寺院の総合研究その13"平成15年度日本大学理工学部学術講演会梗概集・建築計画系部会. 672-613 (2003)
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[Publications] 大山亜紀子(友田博道編): "宗教建築のかたち『ベトナム町並み観光ガイド』"岩波アクティブ新書、 岩波書店. 77-84 (2003)