2004 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-I)TaxによるT細胞増殖促進機序の解析
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02J10963
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岩永 律子 東京医科歯科大学, 疾患遺伝子実験センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヒトT細胞白血病ウイルス / 成人T細胞白血病 / Tax / サイクリンD2 / CDK6 / 組織特異性 / 細胞周期 / 転写活性化 |
Research Abstract |
本研究は、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-I)による成人T細胞白血病発症機構の解明を最終目的とする。HTLV-Iの転写活性化因子Taxが細胞の癌化に重要な役割を果たすと考えられているが、その機序の詳細と癌化のT細胞特異性の原因は明らかにされていない。我々は、Taxが休止期の細胞に細胞周期を促進する能力をもち、しかもこの作用がT細胞特異的であることを見出している。従って、TaxによるT細胞特異的な細胞周期の促進がHTLV-I感染によるT細胞特異的癌化の原因の一つである可能性が示唆される。我々はTaxによる細胞周期促進機序を解析し、TaxはサイクリンD2・CDK6等の細胞周期制御遺伝子をT細胞特異的に活性化すること、Taxによるこれらの遺伝子の発現誘導がTaxによる細胞周期の進行に必須であることを明らかにしている。そこでTaxによるCDK6遺伝子の発現誘導機序を解析したところ、サイクリンD2遺伝子と同様に転写因子NF-κB活性化能に依存しかつCDK6プロモーターのNF-κB様結合配列を介して直接転写活性化することが明らかとなった。Taxによるこれらの遺伝子の活性化がNF-κB自身を介するかどうかを調べるために、T細胞にNF-κBの構成因子の一つであるp65に対するshRNAを導入して発現をノックダウンしたところ、TaxによるサイクリンD2・CDK6プロモーターの活性化が抑制された。従って、TaxはT細胞に於いてサイクリンD2・CDK6遺伝子をNF-κBを介して直接活性化することが明らかになった。これに対し線維芽細胞に於いては典型的なNF-κB結合配列は活性化するにも関わらずこれら遺伝子を活性化しなかった。以上からTaxによるNF-κBを介した細胞周期制御遺伝子の転写活性化に組織特異性があり、これがTaxによる組織特異的細胞周期促進の原因であることが強く示唆された。
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Research Products
(2 results)