2002 Fiscal Year Annual Research Report
放射光を用いた1分子計測法は生体分子内運動と可視化する
Project/Area Number |
02J11108
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
奥村 泰章 信州大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 1分子計測 / 放射光 / 多層膜ナノ結晶 / 膜タンパク質 / 生物物理学 / DXT |
Research Abstract |
生体分子を正確に理解するためには、静的な構造情報、機能特性だけではなく、動的な構造情報を1分子で得ることが重要となる。本研究は、世界最高輝度を有するSPring-8からの放射光を用いたX線1分子計測法(Diffracted X-ray Tracking : DXT)により、生体1分子の動的分子内構造変化計測を行っている.DXTの原理は、基板に固定された生体1分子に金属ナノ結晶をラベルし、金属ナノ結晶から得られる回折X線斑点を指標に時分割トレースを行うことにより実現する。 本年における研究実績としては、まず、目的1分子にラベルするナノ結晶を直径約25nmのサイズで作製可能にした点である。ナノ結晶は、目的となる生体1分子の運動を制限することなく、またタイトにラベルする必要があるため、微小、且つ高い表面反応性を必要とする。そして、ナノ結晶から高強度の信号を得るために、非常に高い結晶性が必要となる。そこで、我々は、Mo/Si多層膜にAu層を導入し、リゾグラフィー技術を応用した結果、直径25nmの多層膜ナノ結晶の作製に成功した。 更に、膜たんぽく質であるBacteriorhodopsin(BR)1分子の分子内構造変化計測を試みた。BRは分子内に存在するレチナールが特定の光(570nm)を吸収することにより異性化反応を示し、細胞内から細胞外へとゲロトンを輸送するプロトンポンプとしての機能を発現する。結果として、BR1分子の特定アミノ酸残基において、水溶液中でのブラウン運動だけでなく、光照射による分子内構造変化を可視化することに成功した。本実験により得られたBRの分子内構造変化の値は、結晶構造解析により得られた値と非常に良く一致する。本研究成果は、論文としてまとめ、現在投稿中である。
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Research Products
(1 results)