2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J11130
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
東田 尚子 一橋大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 寡占理論 |
Research Abstract |
本年は、産業組織論における寡占理論の研究を行った。寡占理論には、大きく分けて静学的な寡占理論と動学的な寡占理論がある。古くから研究が行われてきた静学的寡占理論においては、寡占市場が実際よりも競争的な成果をもたらすことを結論付けていると批判されてきた。静学的寡占理論においては、ある時点でのある企業の行動が他の企業の将来の行動に影響を与えること、すなわち戦略的要素を考慮していないからである。これを考慮するのが、動学的寡占理論である。動学的寡占理論の分析においては、ゲーム理論が用いられる。ゲーム理論においては、市場の集中率が高いこと、寡占市場の下流市場における集中度が低いこと、非価格競争よりもむしろ価格競争が競争の中心であること等の要件が満たされれば、寡占市場において協調的行動がとられる傾向が強くなることが示されている。独占禁止法におけるゲーム理論の応用については、否定的な見解が根強い。ゲーム理論は必然的に起こる結果ではなく、起こる可能性のある結果を示すものであり、不確定な要素を多く含むため、違法とされる行為の定型化が困難であるからである。その結果、寡占的協調行動の違法性は、関係するあらゆる要因を考慮に入れて判断されなければならない。このような困難な検討を避けるため、寡占市場が成立してからの事後的な法の適用ではなく、寡占的協調行動が行われる市場が成立するのを事前に防ぐため、合併等を対象とする集中規制においてゲーム理論は応用されている。
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