2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J11130
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
東田 尚子 一橋大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 寡占的協調行動 / 価格の同時引き揚げ / EC法:フランス法 |
Research Abstract |
本年度はカルテルの規制を用いて寡占的協調行動を規制することの可能性及びその限界を研究した。カルテルの規制により、複数事業者が明示及び黙示の合意又は協調に基づき共に価格を引き上げる等の反競争的行為をとることが禁止されている。この規制により寡占的協調行動は明示の合意に基づかなくとも禁止され得るが、黙示の合意はどのようなばあいに推定されるか、また、その程度の協調性が必要とされるかが問題となる。寡占的市場においては、競争者の互いの行動に高度に依存しながら自己の行動を決定しており、その結果とられる協調的行動は、大きく分けて、熾烈な競争の表れである場合と、黙示の合意又は事前の協議に基づく反競争的行為である場合があり、後者のみが禁止の対象とされるべきであるからである。フランス法及びEC法において、黙示の合意又は協調は合意又は事前の協調がなければとられ得ない。経済的に非合理的な行為が行われた場合推定される。この基準に照らせば、価格の同調的引き揚げは、原材料の上昇などが原因であり得、それ自体では合意又は事前の協調を推定させる理由とはならないが、価格の引き上げ率が原材料費の上昇率を上回っており、さらに同時に、同率で、度重なって行われている場合、合意又は事前の協調が推定される。EC法において、競争委員会は積極的にこの基準を用いて寡占的協調行動を禁止しているが、EC裁判所は、競争委員会の決定を否定している。フランス法においても、パリ控訴院はこの基準の運用に積極的であるが、破棄院(最高裁に相当)は消極的である。この基準の限界は、合意又は協調以外の理由で協調行動が説明できれば当該行為を禁止することが出来ないこと、及び行動規制であるカルテルの規制においては、協調行動の背景にある市場構造などを厳密に考慮することが困難なことである。そこから、来年度の研究対象である構造規制である独占規制を用いる必要が生じる。
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