2002 Fiscal Year Annual Research Report
オランダの多文化主義政策におけるムスリム移民の社会統合
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02J11190
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
久保 幸恵 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 多文化の共存 / 移民問題 / イスラーム / オランダ / 多極共存型デモクラシー / 高齢者問題 / フィールドワーク / イラク巧撃 |
Research Abstract |
本年度においては、オランダにおけるイスラーム教徒移民の高齢者組織がどのようにして設立・運営され、オランダ社会においてどのような地位を占めているのかを研究した。本研究は、多極共存型デモクラシー形態を採るオランダを事例として、「文明の衝突」論を超えた新しい多文化共存の論理の構築を目指した私の研究の一環として行われたものである。オランダにおいては、この高齢者組織の他にもイスラーム教徒移民のテレビ・ラジオ局や小学校が、オランダ政府からの全面的な財政支援を得て活動を展開しており、これら各々の組織の具体例を調査することによって、オランダにおける多文化との共存の論理における可能性と限界を明らかにできると考えている。 平成14年においては、これまで収集してきた資料のうちから、高齢者問題に関係する資料を抜き出し、系統的に整理することに従事した。膨大な資料を蓄積していたので、大学院生およびオランダ人などの助けを借りて資料の整理にあたった。 平成15年1月から2月にかけて行った現地調査においては、新しい各種文献や政府資料の収集を行った。さらに(1)移民の高齢者政策に携わっている政府関係者、(2)高齢者組織の運営者、(3)高齢者組織の支部において直接にムスリム移民にサービスを提供している人々、(4)オランダにおいて移民の高齢者問題に取り組んでいる研究者、らにインタビューを行った。これらのインタビューはビデオ・テープに記録した。インタビュー結果および収集した資料を併せて検討し、現在は研究結果を学術誌に発表する準備を進めている。 また現地に滞在した期間はアメリカのイラク攻撃の直前であり、当地においてもイスラームに対する関心が高まっていた。そのため数多くのイスラーム教徒移民に対する新刊書が出版されており、それらを収集した。また同時期にオランダの総選挙があり、様々なメディアを通じて政治家のイスラーム教徒移民に対する姿勢に触れることができたことは、今回の調査の主目的ではないが成果の一つとして挙げることができる。
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