2002 Fiscal Year Annual Research Report
膜レセプター発現型磁性ナノデバイスの構築及びその創薬への応用
Project/Area Number |
02J11296
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
吉野 知子 東京農工大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナノ磁性粒子 / Gタンパク質共役型レセプター / 磁性細菌 / D1ドーパミンレセプター(D1R) / Mms16 / リガンド |
Research Abstract |
本研究では磁性細菌Magnetospirillum magneticum AMB-1が細胞内で生合成する脂質二重膜で覆われたナノ磁性粒子上に、遺伝子工学的手法を用いて膜レセプターを発現させ、生体膜に近い環境下における膜レセプターの解析を行った。Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)の1つであるD1ドーパミンレセプター(D1R)を用い、様々なGPCRに応用可能なナノ磁性粒子表面ディスプレイ法を確立した。 磁性細菌から得られるナノ磁性粒子上には複数のタンパク質が存在しており、これらのいくつかは既にアミノ酸配列、塩基配列に関して解析が行われている。本研究ではナノ磁性粒子上に主要に局在するタンパク質(Mms16)をアンカー分子として利用し、D1Rを発現させたナノ磁性粒子を生合成することを試みた。D1R遺伝子のみまたはD1R遺伝子とMms16遺伝子からなる融合遺伝子をそれぞれシャトルベクターに組み込み、このベクターを大腸菌に導入した。大腸菌の形質転換体から得られた細胞膜画分を用いて発現解析、及びレセプターの機能解析を行ったところ、D1RおよびMms16-D1R融合タンパク質の発現量はほぼ同等であり、またそのリガンド結合量は同程度の活性を示していた。この結果より、D1RのN末端領域にMms16を融合することによるレセプター機能の低下は見られなかった。そこでD1R-Mms16遺伝子を組み込んだベクターを磁性細菌AMB-1に導入し磁性細菌の形質転換体を作製した。得られた形質転換体を細胞破砕後、磁気分離により組換えナノ磁性粒子の回収を行い、得たら粒子の機能評価を行った。D1Rを認識する抗体を用いて免疫反応を行ったところ、組換えナノ磁性粒子上にD1Rの存在が確認された。これよりD1RはMms16の誘導により、粒子上に局在したことが示された。さらに野生株から得られたナノ磁性粒子と組換え磁性粒子とのリガンド結合量を比較したところ、形質転換体から得られた粒子には高いリガンド結合能を保持していることが示された。これはナノ磁性粒子上に存在するD1Rが適切な構造を保ち局在しているためにその活性が保持されていることが示唆された。
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