2003 Fiscal Year Annual Research Report
英仏海峡にまたがる政治文化のネットワークと中世後期イングランドの王権理念
Project/Area Number |
02J11396
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
梁川 洋子 関西大学, 文学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | イングランド / 中世 / 韻律詩 / 国王入市式 / 儀礼 |
Research Abstract |
昨年度より準備していたとおり、今年度7月に英国のリーズ国際中世史学会においてRoyal Entry in the Later Medieval England(中世後期イングランドにおける国主入市式)と題する報告をおこなった。この報告では、とくに15世紀半ばのイングランド国王ヘンリ6世とその王妃マーガレット・オブ・アンジューによるロンドン入市式をとりあげた。まず、同時代史料にもとづいて各入市式において上演されたページェントの内容を再構成し、各場面の意味するところを分析した。さらに、それぞれの入市式の政治的背景を検討し、都市当局と王権との政治的関係と入市式の挙行との関連を分析した。 リーズでの報告後から現在まで引き続き英国に滞在し、ウェールズ大学スウォンジー校のラルフ・グリフィス名誉教授から研究上の助言を受けつつ、中世後期イングランドの王権理念についての研究を深めた。とくに、中世イングランド史研究に不可欠である手稿本の読解について有益な助言と指導を得ることができた。 さらに、所属する西欧中世史研究会より出版された論文集『史料が語る中世ヨーロッパ』に執筆者の一人として参加し、「『イングランド政策の書』にみる中世後期イングランドの政治意識」と題する論文を寄稿した。この論文ではまず、15世紀半ばに書かれたとされる『イングランド政策の書』という韻律詩の写本の伝来状況を検討し、この詩が同時代においてのみならず16-17世紀にいたるまで読み継がれた作品であったことを明らかにした。さらに、この詩の成立時の政治状況と内容の分析を通じて、当時のイングランド商人および市民層のあいだにナショナリズムの高揚がみられたことを解明するとともに、こうした文学作品がもつ歴史史料としての有用性を指摘した。
|
Research Products
(1 results)