2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J11402
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
森田 泰介 関西大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 加齢 / 展望的記憶 / 自発的想起 / 記憶補助 / 認知過程 / 意図 / 予定の記憶 / 無意図的想起 |
Research Abstract |
今年度は,高齢者及び若齢者を被験者として実験的研究及び調査的研究を実施することにより,展望的記憶課題における自発的想起の認知過程のうち,加齢による差が見られるのはどの部分であるのかを検討した.また,高齢者及び若齢者に対して,無意図的想起に関する調査を実施し,その実態を明らかにした.これらの研究から新たに得られた主な知見は以下の2点に整理可能である. 1.展望的記憶課題の遂行にとって必要になる記憶を構成する3つの要素(意図の記憶,行為の記憶,手がかりの記憶)のうち,最も減衰しやすいのは行為の記憶であり,また,加齢はこれら3つの構成要素に均等に影響すると考えられること. 2.回想的記憶課題における無意図的想起の生起頻度には加齢による差は見られないが,展望的記憶課題における無意図的想起の生起頻度には加齢の影響が見られ,高齢者のほうが無意図的想起を経験する頻度が低いこと. これらの結果から,展望的記憶課題における自発的想起の失敗は,その多くが行為の記憶の想起失敗によるものであり,行為内容に関する想起を補助することができれば自発的想起の失敗を防ぐことができることが示唆される.また,高齢者において展望的記憶の無意図的想起を経験する頻度が低くなるという新たな調査結果は,様々な解釈の可能性を持つため,現在開発中の実験手法によりさらなる解明を行ってゆくことが必要である.なお,上記の1は28th International Congress of Psychologyで発表されることが決定されており,2はすでに5th Tsukuba International Conference on Memoryで発表されている.今年度の補助金は,主に加齢心理学関連の文献と,高齢の被験者にとって都合の良い状況で実験を実施するためのポータブルコンピュータ及びその制御を行うためのソフトウェアの購入に充てられた.
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Research Products
(1 results)