2003 Fiscal Year Annual Research Report
補体制御因子SCRタンパク質の受精と分子進化に関する研究
Project/Area Number |
02J11444
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 直和 大阪大学, 遺伝情報実験センター, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 補体 / 補体制御因子 / CD46 / 精子、卵子 / 受精 / 先体反応 / SCRタンパク質 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
私は、昨年度に引き続きCD46ノックアウトマウスを用いて受精過程におけるその機能解析を行っている。昨年度は、CD46ノックアウトマウスの作製に成功し、そのマウスの精子が野生型と比較して受精可能になるために必要な先体反応(精子細胞膜と先体外膜との融合)を起こしやすくなっており、CD46は先体反応を制御する役割があることを明らかにした。本年度は、CD46ノックアウトマウスのこの表現型がCD46本来の機能であるのかを評価する目的と、ヒトCD46でも機能の代償が可能かを知るためにヒトCD46のトランスジェニックマウスを作製した。その表現型解析については、来年度行う予定である。また、受精における補体の主要因子C3とCD46の関係を調べる目的で、C3/CD46ダブルノックアウトマウスを作製した。しかし、雌雄どちらのダブルノックアウトマウスともに正常な妊孕性を示した(未発表)。今後は、先体反応について詳細な解析を行うつもりである。またこの成果は、23rd Annual Meeting of the American Society for Reproductive Immunologyにおいて口頭発表を行った。 もう一つの研究課題であるSCRタンパク質の分子進化については、我々が以前発表したニワトリの補体制御分子CrempとCD46の相同性のある遺伝子配列を用いて、円口類のヤツメウナギの肝臓に発現する新規補体制御因子の単離に成功した。この分子(lamprey C4bp-like C regulatory protein ; Lacrep)は、SCRドメインを8個もつその分子骨格から、ヒトの分泌型補体制御因子、C4bpのα鎖のホモログと考えられた。また他のSCRタンパク質とも、個々のSCRドメインにおいて30%を超える高い相同性を示した。さらにLacrepは、補体制御に関する生理活性もほ乳類と同様に存在していた。このことから、この分子は一次構造と生理活性の両方において、補体制御性SCRタンパク質の祖先分子に近い分子であることが示唆された。またこの成果は、第33回日本免疫学会総会・学術集会においてポスター発表を行った。
|