2004 Fiscal Year Annual Research Report
ベネズエラとコロンビアの比較小説研究から見た文学のアイデンティティ形成への寄与
Project/Area Number |
02J11582
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺尾 隆吉 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | ラテンアメリカ / 文化政策 / 小説 / 出版社 / 文学教育 / 政治暴力 |
Research Abstract |
本年度は本研究プロジェクトの最終年であり、研究成果の公表及びその集大成としての研究書の執筆に重点を置いた。平成16年6月のラテンアメリカ学会においては、20世紀前半のラテンアメリカ小説に着目し、その受容を文化政策との関連から考察する発表を行った。同年11月ベネズエラの文学研究者グレゴリー・サンブラーノ氏をまじえたシンポジウム「現代ベネズエラ小説」では、ベネズエラ小説における政治暴力と小説創作の関係を考察し、発表した。さらに17年1月には、これまでの研究成果を一冊の本にまとめた研究書「La novelistica de la violencia en America Latina」の執筆を終え、ベネズエラのロス・アンデス大学出版局に提出した。17年9月までには単行本としてベネズエラ、コロンビア両国で発表される予定である。本書は主としてベネズエラ、コロンビア、メキシコ三国における政治的事件と小説創作の関係を考察したものであり、三者の比較研究から社会に対する小説家の役割、さらには小説が社会に与える影響を具体的な作品分析から明らかにしている。また、小説と文化政策、文化的アイデンティティ形成との関連についても具体的な展望を示しており、これまでの研究の集大成というのみならず、今後にもつながる成果と考えられる。スペイン語での執筆ということになったが、近いうちに日本語訳も行う予定である。この研究書の発表をもって、ラテンアメリカにおける小説と社会の関係に主眼をおいた本研究プロジェクトは、十分な成果をあげたものと確信する。
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