Research Abstract |
日本の婚姻率は先進諸国の間でもかなり高く,結婚に対する志向性が非常に強いと言われてきたが,近年,未婚化・晩婚化はわが国においても進行してきている。このような未婚化・晩婚化の背景には,結婚に対する伝統的規範意識,すなわち適齢期志向の弱体化(国立社会保障・人口問題研究所,1999など),性役割に関する意識の変化(安達,1999など),個人主義(伊東,1997など),ライフスタイルの変化に伴った結婚観の変化があげられる.しかし,結婚観の変化を示す研究がある一方,変化のない側面を示す研究もある(山岸,2001など)。このように結婚観は個人差が大きいと考えられる。そこで本研究では,個人の結婚に対するさまざまな考え方や態度を浮き彫りにするために,内藤によるPAC(個人別態度構造分析)技法を用い,事例研究的に,若年層の独身男性における結婚観の変化の方向を探ることを目的とした。PAC分析の結果を「結婚意思を促進させるもの」と,「抑制させるもの」とに分けて考えると,促進させる要因としては,「結婚により不満が解消されると思っている」,「情緒的繋がりを結婚により得られると思っている」,「周囲が気になる(プレッシャー)」,「両親の仲の良さ」などが挙げられた.一方,抑制させる要因としては,「結婚により不満が解消されるとは思っていない」,「情緒的繋がりを結婚以外で得られると思っている」,「個を重視している」,「伝統的な結婚観を持つ自分と非伝統的になってきた周囲の結婚観とのギャップを持っている」,「結婚に対する不安を持っている」,「両親の不仲」などが挙げられた.
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