2004 Fiscal Year Annual Research Report
Nrf2ノックアウトマウスを用いた酸化ストレス性発がんメカニズムの解析
Project/Area Number |
02J20069
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
神吉 けい太 国立医薬品食品衛生研究所, 病理部, 特別研究員(PD)
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Keywords | Nrf2 / 酸化的ストレス / 鉄ニトリロ三酢酸 / Pentachlorophenol / in vivo変異原性 / gpt delta |
Research Abstract |
薬物代謝系第2相酵素群の統一的転写因子として知られるNrf2を人工的に欠いたトランスジェニックマウスを用い、げっ歯類腎発がん剤である鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)が引き起こす急性腎毒性と酸化的障害の遺伝子型による感受性差異を比較し、酸化的ストレスに対する生体防御機構におけるNrf2の役割を調べた。その結果、Fe-NTA投与による病理組織学的な腎毒性の発現は、-/-個体の方が+/+個体より早期、かつ顕著であった。また酸化的ストレスの指標とされる脂質過酸化(TBARS)、及び酸化的DNA損傷(8-oxodG)のレベルは、Fe-NTA投与後1時間において-/-個体の方が+/+個体より強く上昇した。生体内抗酸化物質として知られるグルタチオンの組織含有量、およびその合成調節酵素であるγ-ガルタミルシステイン合成酵素の活性は-/-個体の方が+/+個体より有意に低かった。従って、マウス腎臓における酸化的細胞障害に対して、Nrf2を介した防御機構が重要な役割を担っていることが示唆された。 マウス肝発がん剤であるPentachlorophenol(PCP)について、肝臓での代謝課で、程発生する酸化的ストレスによるin vivo遺伝子突然変異誘発の可能性を、肝発がん嫌発(C57BL/6)、及び好発(B6C3F1)系統gpt deltaマウスを用いて調べた。その結果、PCPの用量依存的(0,600,1200ppm)に肝重量、8-oxodG量、及び欠失変異頻度の上昇が認められ、その程度はC57BL/6系統よりB6C3F1系統のほうが顕著であった。一方で点突然変異頻度は対照群と比べ、投与群に有意な上昇は見られなかった。従って、PCPの酸化的ストレスを介した肝発がん機構に、8-oxodGに起因する点突然変異ではなく欠失変異が関与する可能性が示唆された。 発がん機序が異なると考えられる数種のラット肝発がん物質について、in vivo変異原性アッセイのモデル動物であるgpt deltaラットを用いた実験を行ない、それぞれの変異頻度と変異スペクトラムを明らかにし、化合物特異的な発がんメカニズムについて考察した。この内容はMolecular Carcinogenesis 42:9-17(2005)に発表された。
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Research Products
(4 results)