2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト染色体の安定化機構を応用した長期持続的遺伝子発現システムの開発
Project/Area Number |
02J20130
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
岡部 潤 独立行政法人産業技術総合研究所, ジーンファンクション研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 染色体 / 安定化 / テロメア / TRF1 / 不死化 / 老化 / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
1.DNAの安定性を動物細胞で高感度に測定する系の開発と条件検討 DNAの安定性を動物細胞で高感度に測定する系を作るために、測定用環状DNAとそのDNAが機能するために必要な因子を持つ細胞を用いて実際に安定性が測定できるかどうかの条件検討を行った。具体的には、薬剤のポジティブ選択(抗生物質耐性遣伝子)とネガティブ選択(薬剤感受性遺伝子(自殺遺伝子))の2つの遺伝子マーカーをEBV(Epstein-Barr virus)の複製系に組み込んだ環状DNAを、この複製系が機能するために必須なEBNA1タンパクを発現させたヒト細胞に遺伝子導入した。次に目的のDNAが導入された細胞を選択するためにポジティブ選択を行い、その後、薬剤耐性細胞を薬剤非存在下で一定時間それぞれ培養した。最後に、それらの細胞を播種し、ネガティブ選択を行った。以上の過程において、1週間後に出現したコロニーは、薬剤非存在下の期間で目的のDNAが失われた細胞と考えた。 1)ネガティブ選択で得られたコロニーは測定用環状DNAが失われたものなのかを確かめるために、これらのコロニーからゲノムDNA以外のepisomal DNAを抽出し、大腸菌形質転換法を行なった。その結果、ネガディブ選択で得られたコロニーにはそれらのDNAが失われていることを確認した。 2)上記の実験方法で、ネガティブ選択で得られたコロニーを算出し、DNA脱落率を測定した。その結果、以前ポジティブ選択のみで測定した報告(7-2% loss/generation)と一致しており、この実験法は有用であることを証明した。 2.TRF1タンパク質の生化学的性状の解析 染色体の安定化に携わるテロメアの形成と維持に必須なテロメアDNA結合タンパク質であるTRF1の核内における位置を明らかにするために,細胞を塩濃度を変化させて(0.1-2.0M NaCl)段階的抽出したそれぞれの画分に対して、抗TRF1抗体によるイムノブロッティングを行った。まずendogenousTRFの局在を不死化細胞と有限寿命細胞で比較したところ、ともに0.3M NaCl画分でTRF1が多く存在していた。しかし、TRF1を過剰発現させた両細胞で比較すると、TRF1過剰発現不死化細胞ではendogenousTRF1と同様に高塩濃度画分でその存在が認められたが、TRF1過剰発現有限寿命細胞ではより低塩濃度の画分(0.2M NaCl)でTRF1の存在が認められた。この結果は、TRF1は核マトリックスと相互作用することによって機能を持ち、これが有限寿命細胞では失われている可能性を示唆している。これらの結果は、国際論文および細胞核ダイナミックス研究会にて発表した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] J.Okabe, A.Eguchi, R.Wadhwa, R.Rakwal, R.Tsukinoki, T.Hayakawa, M.Nakanishi: "Limited capacity of the nuclear matrix to bind telomere repeat binding factor TRF1 may restrict the proliferation of mortal human fibroblasts"Human Molecular Genetics. Vol.13,No.3. 285-293 (2004)
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[Publications] M.Nakanishi, A.Eguchi, T.Akuta, E.Nagoshi, S.Fujita, J.Okabe, T.Senda, M.Hasegawa: "Basic peptides as functional components of non-viral gene transfer vehicles"Current Protein and Peptide Science. Vol.4. 141-150 (2003)