2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J20134
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
永井 康雄 国立精神・神経センター, 遺伝子工学研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 硫化水素 / アストロサイト / カルシウム / 脳 / 神経伝達 |
Research Abstract |
硫化水素は古くからその毒性について詳しい研究がなされてきたが、生理機能を持つとは思われていなかった。1989年、脳内に硫化水素が存在していることが報告され、硫化水素が脳内で何らかの機能を持っているのではないかと提案された。我々はCBSが脳内硫化水素合成酵素のひとつであることを見い出し、脳スライスを使った電気生理学的実験ではLTPの誘導が硫化水素で促進されること、CBSノックアウトマウスではLTPが変調していることを報告した。このように硫化水素の合成系を中心に知見が増えてきたが、その細胞レベルでの直接的な作用についてはよく分かっていなかった。 本研究において、我々は蛍光カルシウム指示薬を用いてラット海馬初代培養のリアルタイムイメージングを行ない、生理的濃度の硫化水素によって誘導される細胞内カルシウム濃度の変化をみた。その結果ニューロンよりもむしろ、アストロサイトにおいて硫化水素刺激による細胞内カルシウムの上昇が観察された。さらにこのカルシウム上昇が引き金となって、アストロサイト細胞間でカルシウムウェーブが観察された。この現象は、初代培養系だけではなく、ラット海馬の急性スライスにおいても確認することができた。このカルシウムの上昇は、脱感さしやすく、応答も遅い。これは、これまでカルシウムウェーブを起こすとされているATP、グルタミン酸などとは全く異なる特徴であった。さらにこのカルシウムの上昇は主に細胞外からのカルシウムの流入によるものであることも明らかにした。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Yasuo Nagai, Mamiko Tsugane, Jun-Ichiro Oka, Hideo Kimura: "Hydrogen sulfide induces calcium waves in astrocytes."FASEB Journal. 18(3)(in press). (2004)