2003 Fiscal Year Annual Research Report
グルタミン酸作動性ニューロン・GABA作動性ニューロン分化機構の解析
Project/Area Number |
02J20135
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
鮎川 幸一 国立精神・神経センター, 疾病研究第四部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 神経系前駆細胞 / 神経再生 / 分化 / G-蛋白質共役型受容体 / エンドセリン / アドレナリン / PACAP |
Research Abstract |
神経系を構成する細胞群は胎児期に未分化な神経上皮細胞から形成されるが、この神経上皮細胞は脳をはじめとする中枢神経系すべてのニューロンとグリア細胞を形成する。神経上皮細胞は微小環境で種々の因子の影響をうけて増殖、分化、細胞死あるいは移動して脳組織を形成すると考えられるが、その分子機構に関しては現在も不明な点が多い。一方、G蛋白質共役型受容体(GPCR)は細胞膜表面に存在する受容体の中で最大のファミリーを形成しており様々なシグナルを細胞内に伝達することが知られている。最近神経上皮細胞の増殖をGPCRが調節しているということが報告されてGPCRが神経上皮細胞に対して様々な影響を与えるのではないかと考えられた。そこで神経上皮細胞に発現しているGPCRをスクリーニングして、発現しているGPCRの作用薬剤影響を細胞生物学的手法により解析した。その結果、エンドセリンB受容体、アドレナリン受容体、およびPACAP受容体が神経上皮細胞に対して特異的な生理作用を有していることが今回新たに明らかとなった。神経上皮細胞におけるエンドセリン受容体からのシグナルはカドヘリンを介して神経上皮細胞どうしの細胞間接着を強力に促進することが明らかになった。また、アドレナリン受容体からのシグナル生理的作作用をサブタイプ特異的作用薬を用いて解析したところ、神経上皮細胞の細胞死を抑制する働きを担っていることが明らかとなった。さらに神経上皮細胞におけるPACAP受容体からのシグナルは細胞増殖を強力に促進することも明らかとなった。このほかにも細胞の形態に影響を与えるものや特異的ニューロンやグリア分化に影響を与える可能性があるGPCRも見出しており、慎重に解析を進めている。これらのことから、神経上皮細胞に発現するGPCRが微小環境で神経系前駆細胞を制御している可能性が示唆され、特異的ニューロン分化におよぼす影響も考えられた。
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