2003 Fiscal Year Annual Research Report
乾燥地域における干ばつ被害軽減のための蒸発散量調節に関する研究
Project/Area Number |
02J20148
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
松島 美智子 (早野 美智子) 独立行政法人防災科学技術研究所, 総合防災研究部門, 日本学術振興会特別研究員PD
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Keywords | 節水栽培 / 遮光 / 地温上昇低減 / 蒸発量抑制 / 乾燥地域 / 水質源保全 / 水資源保全 / 栽培期間延長 |
Research Abstract |
本研究では,乾燥地域での緑化・農業振興と水資源保全のための節水栽培と高温・乾燥・高日射および塩害対策のための手法を提案する、なるべく簡易かつ安価な形で技術を普及させるために地域の特徴に見合った対策方法のエッセンスを抽出する、その地域で入手可能な自然素材を利用した資源循環型の対策方法について検討を行う. 本年度において、遮光材・マルチ材の選択と遮光効果・蒸発量抑制効果について栽培試験や室内実験を行い遮光材として適切な自然素材の提案と利用法に関する検討を行った.アラブ首長国連邦内陸部に近いアルアインにて栽培試験を実施し、遮光効果やかん水形態、溝底播種を組み合わせた蔬菜類の節水栽培試験を屋外にて実施し、現地特有の産物であるデイツパームの枯れ枝を利用した遮光方法の提案とその効果について市販の遮光用不織布シートと比較した.デイツパームを使った土壌被覆(マルチ)や低い位置での遮光による日中地温上昇低減効果は非常に高く、それらの効果によりコマツナの発芽率は非遮光状態と比べ非常に高くなった.また、気候による劣化に強いポリオレフィンシートの埋設による表層土壌水分の地下への浸透防止により根圏付近の土壌水分量の増加ばかりでなく地表面付近地温の日中における上昇抑制効果が顕著であった. 防災科学技術研究所所有の風洞付きライシメータを使った人工気象環境下での蒸発実験を行い、デイツパームマルチによる地温上昇低減効果と蒸発量の遅延速度をマルチがない場合と比較した.またマルチが無い場合については自己マルチの発達過程にみられる蒸発抑制効果と地温上昇低減効果への風速の寄与について定量把握した。気温25℃相対湿度50%の気流の流速5m/s条件下で無被覆状態での蒸発は散水直後より恒率蒸発期が24時間ほど続いたのち減率蒸発期に入り、蒸発速度が激減する。デイツパームマルチを3cmほど砂表面に敷設すると恒率蒸発期の蒸発速度は無被覆に比べ4割減少するが72時間以上続く。結果として散水より100時間後に測定される蒸発による水損失量はほぼ等しくなり、デイツパームマルチによる蒸発量の遅延効果を定量的に確認することができた。 これらの成果のうち風洞試験に関する結果は土木学会年次講演会(平成15年9月)にて発表した.
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