2005 Fiscal Year Annual Research Report
陸棚域における海産魚類幼稚魚の自然死亡に影響を与える要因に関する研究
Project/Area Number |
02J20156
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
小岡 孝治 独立行政法人水産総合研究センター, 北海道区水産研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 海産魚類 / 自然死亡 / 陸棚 / スケトウダラ / 冬季減耗 / 栄養状態 / 飢餓 |
Research Abstract |
海産魚類幼稚魚の栄養状態が冬季減耗に対してどのように影響するのかを明らかにするために、スケトウダラ0歳魚の脂質含有量を検討した。一般にタラ科魚類では取り入れたエネルギーは肝臓に蓄積されるため、本研究では代謝可能な脂質として肝臓中に含まれるトリグリセリド(TG)の含有量を調べた。2003年9月から2005年6月まで野外調査を行ったところ、スケトウダラ0歳魚のTG含有量には大きな季節変化があることが明らかとなった。TG含有量は秋季に最大になるが(17.2-18.4%)、冬季に低下し(1.0-5.9%)、春季に再び増加した(12.4-16.6%)。また、肝臓そのものの大きさも同様の季節変化を示し、秋季には体重の4.5-4.6%であったが、冬季には2%程度に減少した。これらのことから、秋季に蓄積した肝臓中における脂質の80.5-93.0%が初冬の段階で消費されてしまっていることが明らかとなった。これは、秋季の餌環境の悪化と晩秋の鉛直混合に伴う底層水温上昇による代謝コストの増加を反映しているものと考えられる。冬季のTG含有量には年変動がみられた。2003/2004シーズンは1月に2.2%まで低下したあと3月まで2%で推移した。4月は調査を行うことができなかったが、動物プランクトンの大増殖の起こる5月でも脂質含有量が3.9%にとどまっていたことから低い値であったと思われる。これに対して、2004/2005シーズンは12月に3.4%まで低下したが、1月には5.8%に増加に転じ3月まで5-6%で推移した。しかしながら4月には1%まで低下していた。なお、両年とも冬季の底層水温は0-2℃の低い値で安定していた。よって、年により冬季の全期間にわたり餌が制限される場合と冬季になると餌の供給がみられ、一時的に蓄積エネルギーの消失が止まる場合のあることが確認された。
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