2003 Fiscal Year Annual Research Report
陸棚域における海産魚類幼稚魚の自然死亡に影響を与える要因に関する研究
Project/Area Number |
02J20156
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
小岡 孝治 独立行政法人水産総合研究センター, 北海道区水産研究所・亜寒帯漁業資源部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 海産魚類 / 自然死亡 / 陸棚 / スケトウダラ / 冬季減耗 / 栄養状態 / 飢餓 |
Research Abstract |
スケトウダラ0歳魚を用いて、摂餌量・成長・成長効率(摂餌量に対する増重量)に及ぼす水温と体サイズの影響に関する飼育実験を行った。6つの水温区および3つの体サイズクラスに分けて、3週間、毎月魚が飽和状態になるまで餌を与えた。その結果、水温が高くなるほど摂餌量も多くなるが、13〜15℃でピークに達し、より高温になると摂餌量は減少する傾向がみられた。高温域での摂餌反応はこれまで調べられておらず、本実験により初めて明らかにされた。また、成長効率は温度が高くなるほど低くなるという傾向がみられた。成長効率は野外の個体群における摂餌量推定に使用される重要なパラメータであり、本研究で数式化された結果はスケトウダラの餌料環境を調べるためだけではなく、モデルを用いた生態系の評価などにも利用することが可能となる。 一方、平成15年9月から平成16年3月まで用船により実施した野外調査により、栄養状態が冬期間に悪化している様子が観察された。特に、肝臓重量指数は12月に急激に減少し、そのまま低い値で推移した。肝臓に蓄えられているエネルギーは環境が悪化した場合に使用されるため、12月以降スケトウダラの生息場の餌環境は極めて悪化していることがわかった。アラスカの研究者が行った飢餓実験では死亡個体の肥満度の平均値は0.5であった。この値を本研究結果にあてはめると、1月以降、肥満度0.5以下の個体が出現し、3月にはその割合が30%まで上昇した。このことから冬季に0歳魚の飢餓による死亡がおこっていることが示唆され、この時期の減耗実態が本種の加入量変動機構を解明する上で重要な要因となることが示された。飢餓による減耗状況を検討する際には、肥満度よりも脂質含有量の方が指標として優れているという報告もあり、今後は飢餓による減耗実態を解明するための、より適正な指標を探索することを目的とした実験を行う予定である。
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