2004 Fiscal Year Annual Research Report
ボナンザ型食物資源を利用する昆虫類の生活史適応の解明
Project/Area Number |
02J20216
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
佐藤 隆士 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所・生物被害研究グループ, 特別研究員(PD)
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Keywords | ボナンザ型食物資源 / キノコ / 食菌性昆虫 / オオキノコムシ / 生活史適応 / 地理的変異 / 休眠 / 移動分散 |
Research Abstract |
ボナンザ型食物資源を利用する昆虫類の生活史適応の解明を目標に、菌類の子実体(キノコ)上で繁殖する食菌性甲虫の生活史適応様式について調査を行った。ボナンザ型資源とは、空間上に散在し発生予測が困難な餌資源を指す。本年度は生息パッチの存続期間と昆虫類の生活史適応様式との関係を検討するために、一年のうちごく限られた時期にしか発生しないが、各個体は比較的長持ちするシイタケと、年間の発生期間は長いが、各個体は短期間で劣化・消失するヒラタケ類を利用する食菌性甲虫の生活史適応様式の比較を行った。シイタケを利用する種の生活史特性については、昨年までの調査において、ニホンホソオオキノコムシDacne japonicaとセモンホソオオキノコムシD. pictaの茨城・岩手個体群ならびにD. osawaiの岩手個体群の化性、休眠特性、成虫の移動分散能力などについて解明した。本年度は、ヒラタケ食のシベリアチビオオキノコムシTriplax sibiricaとホソチビオオキノコムシTriplax japonicaの生活史特性を調査し、シイタケ食種との間で生活史特性を比較した。 その結果、ヒラタケ類を利用する両種の幼虫はシイタケ食種と比べて非常に早く発育するが休眠を持たないこと、成虫は越冬休眠を持つが長日下での飢餓耐性能力は低いことが明らかとなり、野外では年間を通して発生・消失を繰り返す餌資源間を移動しつつ繁殖する年多化性の生活史を持つことが示唆された。これらのことから、オオキノコムシ類は、発生予測が困難な餌資源の発生・消失に対しては移動分散、予測可能性の高い季節変動に対しては休眠によって対処していることが明らかとなり、オオキノコムシ類の生活史の概要が環境変動の予測可能性により「休眠」と「移動分散」が使い分けられるとされる生活史鋳型仮説(Southwood,1977)により説明可能であることが示唆された。
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Research Products
(6 results)