2003 Fiscal Year Annual Research Report
線条体特異的NMDA受容体ノックアウトの運動学習への影響
Project/Area Number |
02J61411
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片岡 宏隆 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 線条体 / NMDA受容体 / 自発運動 / ドーパミン |
Research Abstract |
線条体は、自発運動の調節に重要な脳部位である。線条体は、ほぼ全ての大脳皮質からグルタミン酸を伝達物質とする入力を受け、その情報を統合して大脳皮質の活動を調節すると考えられている。この情報の統合に重要な分子として、神経可塑性に重要であるN-methyl-D-aspartate型グルタミン酸受容体(NMDA受容体)がある。しかしながら、NMDA受容体は、神経系全体に発現しており、通常の遺伝子欠損マウスは致死であることから、線条体の運動機能におけるNMDA受容体の役割は明らかでは無い。このため、遺伝子組み換え酵素であるCre recombinaseを線条体優位に発現するGng7^<ncre>マウスと、N-methyl-D-aspartate受容体の必須サブユニットであるGluRζ1の遺伝子にCre recombinaseの認識配列であるloxP配列を組み込んだマウス(GluRζ1^<flox>マウス)を作成し交配させることで、線条体優位にNMDA受容体を欠損させることの出来るGluRζ1^<flox/flox>Gng7^<ncre>マウス(neostriatum-GluRζ1 KO mice)を得た。neostriatum-GluRζ1 KO miceのGluRζ1蛋白質は、免疫組織学的解析から、生後14日までに線条体優位に消失することが分かった。この変異体マウスは、新規環境下において大きな運動量の増加を示した。自発運動量の調節に重要なドーパミンの代謝及びドーパミンD1とD2受容体の発現は、明らかな減少を示しており、自発運動の上昇の原因とは考えられなかった。このため、線条体のNMDA受容体が、通常、新規環境下において運動量を抑制するために作動していると考えられた。この結果は、線条体のNMDA受容体が、新規な外的要因に対して行動を適切に調節するために重要である可能性を示唆する。
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