2003 Fiscal Year Annual Research Report
カドヘリン-β-カテニン複合体に結合する新規蛋白質IRACの機能解析
Project/Area Number |
02J61419
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 教子 (那須 教子) 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | RICS / RhoGAP / Cdc42 / PAK5 / Neuron |
Research Abstract |
昨年度より進めてきたRICS遺伝子欠損マウスの作製に成功し、これを用いて以下の研究を行った。 RICS遺伝子欠損マウスは正常に生まれ、成長し、繁殖力も正常であった。また組織学的解析を行った結果、RICS遺伝子欠損マウスの脳、腎臓、心臓、肝臓、そして大腸のいずれの組織においても構造上の異常は認められなかった。 RICSがラット海馬の初代培養神経細胞において細胞体のみならず成長円錐にも発現していたことから、神経突起伸展へのRICSの関与について検討した。 まずPC12細胞用いて野生型RICSあるいはRICS-R58Mドミナントネガティブ変異体を遺伝子導入し、NGF刺激により突起の伸展を誘導したところ、RICS-R58M変異体導入細胞で著しい突起の伸展が観察された。 上記の結果を受け、同腹の生後1日目のマウスを用いて海馬神経細胞の初代培養を行い、培養24時間後に突起発生率について計測したところ、RICS遺伝子欠損マウス由来の神経細胞の方が野生型マウス由来の神経細胞に比べ、高い突起発生率を示した。また生後8-9日目のマウス由来の初代培養小脳顆粒細胞においても同様の結果が得られた。 次に、神経突起の伸長を正に制御する分子であるCdc42、Rac1に着目し、初代培養小脳顆粒細胞を用いて神経突起伸展時のこれら分子の活性化状態について検討した。培養24時間後の初代培養小脳顆粒細胞を用いてPBD Assayを行ったところ、野生型に比べRICS遺伝子欠損マウス由来の神経細胞では活性型Cdc42の量が増加していることが分かった。以上の結果より、RICSは神経突起の伸展においてCdc42のGAPとして機能し、神経突起伸展を負に制御することが示唆された。 またRICSはCdc42の標的分子として知られているセリン・スレオニンキナーゼのPAK5と複合体を形成することが分かった。またこれら両分子の結合は、RICSの1280-1317アミノ酸、そしてPAK5の436-719アミノ酸を介した直接的なものであることが確認された。 昨年度の研究結果よりRICSがシナプス可塑性に関与している可能性が考えられることから、RICS遺伝子欠損マウスの学習能力について評価したところ、野生型マウスに比べ学習能力が有意に低度であることが分かった。現在更に詳細な解析を行っている。
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