2002 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質相互作用解析と新規パスウェイ情報に基づく多因子疾患の感受性遺伝子の同定
Project/Area Number |
02J61432
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
箕輪 洋介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 多因子疾患 / ベイジアン・ネットワーク / DNAマイクロアレイ / 遺伝子ネットワーク |
Research Abstract |
本研究では、環境要因と遺伝要因が複雑に相互作用することで発症する多因子疾患と呼ばれる一連の疾患群について、因子間の相互作用を考慮した統計モデルの構築と、そのモデルを利用した病因の解明を目的とした。これらの疾患は、一つ一つの因子が表現型に及ぼす影響が小さいため、原因の解明に非常な困難が伴う。そのため、複数の要因を一つの数理的な枠組みの中でとらえることが有効であると考えられる。そこで、ここでは、まずDNAマイクロアレイの遺伝子発現データから遺伝子ネットワークの推定を試みた。DNAマイクロアレイは、ヒトの9種類の組織由来の64の腫瘍細胞株のデータを用いた。それらのデータから、相互情報量と呼ばれる遺伝子間の関係の強さを表すスコア関数を全遺伝子間について計算し、入コアの高いもの同士をつないでネットワークを構成した。例えば、ある任意の遺伝子Aについて考えたとき、遺伝子Bが高いスコアを持つ場合、遺伝子BはAに対して強い影響を及ぼすと考えられるので、遺伝子BからAに対して矢印を引く。つまり、この作業は、ある任意の遺伝子Aに対して影響を持つ遺伝子群を部分ネットワークとして抽出していることになる。次に、この遺伝子ネットワークを、ベイジアン・ネットワークと呼ばれる統計モデルを用いてモデル化した。このモデルを用いると、例えば上述の遺伝子Aについて、遺伝子Bの影響を考慮した確率密度関数を求めることができる。さらに、この関数は、遺伝子Bの影響成分とそれ以外の成分に分解することができ、その割合は統計的推論アルゴリズムを用いて推定することができる。遺伝子B以外の要因とは、遺伝子Aに対して影響を持つ未知の遺伝子Cによるもの、環境要因によるもの、確率的な誤差成分などが考えられ、この成分について統計的仮説検定を行うことによって、未知の要因の遺伝子Aの発現に対する影響を確率的に推定することができる。以上のような確率的推定を、DNAマイクロアレイ上の全遺伝子(約8000)について行ったところ、従来法では検出されなかった(異なる細胞間で有意な発現量の違いがなかった)が、今回開発した手法では表現型に対して影響を及ぼすと考えられる遺伝子が24個検出された。また、計算機上でのシミーレーション実験を行った結果、この手法が統計的にも、従来法より有用であることが示された。
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Research Products
(1 results)