2003 Fiscal Year Annual Research Report
HPV E4遺伝子産物による細胞周期制御異常に関する研究
Project/Area Number |
02J61435
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 正和 京都大学, ウイルス研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | パピローマウイルス / 細胞周期 / 細胞分化 / がんウイルス |
Research Abstract |
E4による細胞増殖抑制機能 我々は,HPV18由来のE4の発現が細胞増殖をG2/M期で停止する機能があることを報告している(J.Virol.76:10914-20,2002).このE4の作用が,NHFKnにおいてどのような機能を持つのかを検討した.NHFKnにレトロウイルスベクターを用いてE4を導入すると,HeLaやCV1で見られた強い抑制効果は認められなかったが,有意の増殖抑制効果が観察された.この細胞は正常細胞よりも分化刺激に対する反応性が高かった.皮膚モデル培養系に導入した場合でも,prematureな分化が起こることが観察された. E4による細胞増殖停止機能が,皮膚モデルにおいては分化誘導の促進に機能したことは非常に興味深い知見である.パピローマウイルスのウイルス複製は基底層部分では非常に弱く,分化が進むにつれて活性化され,ウイルス粒子は最終分化が起こる最表面部で大量に形成される.ウイルスは,まず細胞の分化プログラムを改編することで細胞増殖を活性化し,感染細胞のポピュレーションを高めており,このことが感染部位の過形成誘導に関連していると考えられる.次にウイルス複製のために積極的に細胞を分化誘導し,効率のよい子孫ウイルス粒子の産生を促進している可能性がある.前者の増殖活性化にはE7やE5の機能が,後者にはE4に機能が関わっていることが考えられ,これらの制御遺伝子の発現切り替えや量的な変化によって,分化特異的なウイルス複製を可能としているモデルが考えられた.
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Research Products
(1 results)