2002 Fiscal Year Annual Research Report
ラミニンの基底膜形成機構の解明と癌転移抑制への応用
Project/Area Number |
02J61443
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下野 知性 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | ラミニン / 基底膜 / 細胞外マトリックス / 表面プラズモン法 |
Research Abstract |
ラミニンの基底膜形成に関わるドメインの機能解析 ラミニンは、基底膜の主要構成分子であり、癌細胞による基底膜の破壊と周辺組織への浸潤に関与していると考えられている。その機能は、二次元の網目状会合体を形成して基底膜の主要骨格となり、他の細胞外マトリックス分子ととともに上皮細胞や癌細胞に作用することである。基底膜の構造の基礎となるラミニン分子の会合は、十字架状の分子構造のうち3つの短腕部が分子間結合にすることによる。 そこで、ラミニンの自己会合に重要と考えられている短腕部のドメインVIの機能解析を行うため、自己会合が可能なラミニン1のα1,β1,γ1鎖のドメインV, VIを発現させることにした。最初に、α1,β1,γ1鎖をコードするcDNAが必要となるので、ラミニン1を発現していると思われるヒト胎児の腎臓由来のファージライブラリーからcDNAをクローニングすることにした。また、ラミニン1を多く発現しているJAR細胞からmRNAを抽出し、逆転写を行ってcDNAをPCRで増幅した。その結果、ファージライブラリーからのクローニングとRT-PCRにより、ラミニンβ1鎖のcDNAをクローニングすることができた。α1鎖とγ1鎖のcDNAは、共同研究者によりクローニングされ、本研究での使用させてもらうことになった。 次に、ラミニンの各鎖のドメインV, VIの大量発現系には293EBNA細胞を用いることにし、His-TagをC末端につけ組換え蛋白質として発現させた。各鎖のドメインV, VIを発現する293EBNA細胞のステイブルトランスフェクタントを確立することができたので、大量発現を行い、Ni-resinによる大量精製を行った。そして、ラミニンの自己会合能を調べるため、精製した各鎖のドメインV, VIの間の結合能を表面プラズモン法で定量的に解析することにした。表面プラズモン法による解析の結果、各鎖のドメインV, VIの間の結合力は非常に弱く、基底膜形成時のラミニンの多量体化は自己会合によってのみ起こるのではなく、細胞表面の受容体による固定や局所的濃度の増加、分子の配列などが関与すると思われた。ラミニンの基底膜形成機構の解明には、短腕部のドメインだけでなく、長腕部のドメインも含めた機能解析も必要となると思われる。今後はラミニン分子全体を解析し、その知見を活かして機能蛋白質(増殖因子や増殖制因子など)をキメラ化した人工ラミニン分子の構成を目指す。
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Research Products
(1 results)