2002 Fiscal Year Annual Research Report
体細胞のがん化および幹細胞の分化制御における「細胞の運命維持システム」の機構解析
Project/Area Number |
02J61447
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
梶梅 輝之 広島大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ポリコーム / mel-18 / 癌抑制遺伝子 / 造血幹細胞 / 自己複製能 |
Research Abstract |
本研究の目的は、哺乳類ポリコーム遺伝子群が細胞の運命決定とその維持の全ての段階の制御に深く関わっていることを解明することであり、これにより新い細胞増殖・細胞死のバランス制御機構を解明することを目指す。全体計画としては、(1)ポリコーム遺伝子群によるがん化機構、(2)幹細胞及びリンパ球の細胞死調節機構、(3)血液幹細胞の多分化能制御機構およびその維持機構に関して解析を行う予定で、今年度は以下のことを解明した。 これまでに我々は、ポリコーム遺伝子群の一つであるmel-18が癌抑制遺伝子として機能し、その+/-マウスの長期観察で腺癌・乳癌が多発することを確認した。その発がん機構の解析から、従来のtwo-hit理論ではなく、Haplo-insufficiencyによることがわかった。ポリコーム遺伝子群は、核内蛋白質複合体として作用することが考えられており、このポリコーム蛋白質複合体のバランス制御機構の破綻が、がん化の原因であることが想定された。つまり、核内のポリコーム蛋白質複合体の不安定化・制御機構破綻が継続すると、細胞のがん化を引き起こすことが分かった。現在その詳細を解析中であり、ヒト腺癌・乳癌の新しい癌抑制遺伝子の発見につながるものと考えている。 また、ポリコーム遺伝子群の造血幹細胞における役割について、C57BL/6マウス(WT)とmel-18トランスジェニックマウス、mel-18ノックアウトマウスを用いて検討した結果、造血幹細砲におけるmel-18の有無もしくは発現量の違いによって、造血幹細胞の自己複製能に変化がみられることを発見した。近年、Hox遺伝子群のHoxb4やWntシグナル系が造血幹細胞の自己複製に関わっているという報告が注目されているが、ポリコーム遺伝子群は、Hox遺伝子群の発現制御因子として知られているため、mel-18の造血幹細胞における役割を明らかにすることにより、「細胞の運命維持システム」の機構の解明ができると考えている。
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[Publications] 梶梅輝之, 他: "ポリコーム遺伝子群mel-18による造血幹細胞の制御機構"第32回日本免疫学会総会・学術集会記録. 32. 241 (2002)
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[Publications] 坂井るり子, 他: "ダイオキシンがおよぼす造血幹細胞への影響 その2"第32回日本免疫学会総会・学術集会記録. 32. 240 (2002)
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[Publications] Ruriko Sakai et al.: "TCDD Treatment Eliminates the Long-Term Reconstitution Activity of Hematopoietic Stem Cells"TOXICOLOGICAL SCIENCES. 72(1). 84-91 (2003)